周術期の口腔機能管理(がん外科手術等)

手術に伴う全身麻酔で、気管内挿管時、口腔内の汚染がひどければ誤嚥性肺炎のリスクが極めて高くなります。

誤嚥性肺炎の原因

 飲食物の嚥下時に気道に流入する印象が強いのではないかと思います。「むせ」ることを防げば、つまり経口摂取を禁止したり、経鼻胃管栄養で対応すれば良いと考えるのは誤っています。
実際に、肺に口腔内細菌が落ち込む原因の多くは、サイレントアスピレーション(不顕性誤嚥)です。

不顕性誤嚥

 むせることなく知らず知らずのうちに気管内に「たれこむ」ように異物が入ってしまうことです。特に高齢者になると、むせたり咳こんだりして異物を外に出そうという体の防御反応が低下します。意識のない全身麻酔中や周術期はこのリスクが大変高まります。気管内挿管チューブそのものが、口腔内の汚染を気管に押し込んでしまっている危険性も考えなければいけません。

術後肺炎

発生頻度は1.5%~6%と考えられています。Khanによる7457名の患者を対象にして行った研究では、非心臓手術後の術後合併症として最も頻度が高く、その発生率は3.0%と報告されています。
術後肺炎が一旦発生してしまうと ICU在室期間や入院期間・死亡率が上昇してしまいます。

周術期は必ず口腔の衛生状態は悪化します

● 手術に伴う無意識状態や経鼻管以外にも
● 手術後の呼吸機能の低下
● 意識レベルや神経活動低下
● 創部痛による咳やむせ機能の低下
● 嚥下機能の低下
などが原因となり、周術期~術後は誤嚥が必発と考えていただきたいと思います。口腔内のプラークコントロールが悪ければ、誤嚥性肺炎の危険は極めて高くなります。

手術前に歯科への受診を勧めてください

歯石の除去、機械的な歯面清掃

歯石は細菌の温床です。硬くこびりついているので歯ブラシでは取れません。

口腔衛生指導

患者さんは、手術のことで頭がいっぱいで、歯に構っていられないという気持ちです。口腔の衛生状態を良くすることで、入院日数が減ったり・肺炎などの術後の合併症が有意に減少できることなども説明させていただきます。

動揺歯の処置

調査によってかなりばらつきがありますが、0.3%ほどに気管挿管時の歯科トラブルが発生しています。麻酔処置に伴う歯牙損傷は、麻酔に対する医療過誤の訴えで最も大きな問題となってもいます。
動揺歯を一時的に隣の歯と固定したり、事前に抜歯してしまう・またはマウスピース(ガード)などの保護装置の製作なども行います。

その他の応急処置

ムシ歯を仮に封鎖したり、鋭縁部を取り除いたり、入れ歯を調整したりします。

外科手術 > 歯科治療

本格的な歯の治療は、お体の手術が終わって全身状態が安定してから行います。あくまで、術後性肺炎などのトラブルを防ぐためのお手伝いができればとわれわれ歯科医は考えています。

どこの歯医者に依頼すればよいか

がんセンターなど地域の基幹病院が、その地区の歯科医師会と医科歯科連携をとっているところも増えてきました。地区の歯科医師会にご連絡いただくのも方法です。(基本的にはどの歯科医院でも対応可能です)。 当歯科医院(浅草田中歯科医院)も、三井記念病院・日本赤十字社医療センター・総合東京病院などの登録医と可能な限り協力しています。国立がん研究センターと日本歯科医師会主催の研修を受けている「がん医療連携歯科医院」を紹介して頂ければ確実です。

がん治療前の歯科受診へお勧め頂ければ幸いです(例)

がん治療を予定されている方は歯科へ紹介します

がんの治療のような大きな手術のときに口の中が汚れていると、せっかく手術が成功しても、肺炎を起したり・入院の日数が伸びたりトラブルの原因になりやすいです。

全身麻酔の手術では、口から喉の奥に人工呼吸器のチューブを入れます。
口の中の衛生状態が悪いと、歯についているバイ菌が気管の中に押し込まれて肺炎の原因になることがあります。
また、この時に弱い歯があると折れてしまったり抜けてしまったりして危険です。
あらかじめ口の中を良好にしておくことで
手術の後、食事を開始するのがスムーズになったり、口内炎などを防いだり、全身の状態を早めに回復させることができます。

かかりつけの歯医者さんがあれば、そちらに診療情報提供書などをお渡ししますし、かかりつけの歯医者さんがいない場合には、当院から受信しやすい連携歯科医院を紹介いたします。