およそ2,000年前(前漢時代)に編纂された現存する中国最古の医学書「黄帝内経」の中において、初めて登場した言葉です。この中で「未病」とは「病気に向かう状態」を指しています。中国では未病を発見し、漢方薬を使って本格的な病気になるのを防ぐのが大切とされました。
日本でも、江戸時代・正徳2年(1712年)に福岡藩の儒学者、貝原益軒によって書かれた養生訓(ようじょうくん)に出てきます。
養生訓に見られる健康は
1.道を行い、善を積むことを楽しむ
2.病にかかることの無い健康な生活を快く楽しむ
3.長寿を楽しむ
こととされていて、
1.あれこれ食べてみたいという食欲
2.色欲
3.むやみに眠りたがる欲
4.徒らに喋りたがる欲
を我慢することが大切とされています。季節ごとの気温や湿度などの変化に合わせた体調の管理をすることにより、初めて健康な身体での長寿が得られるものとするとされています。
予防医学や健康寿命などへの関心の高まりから、最近また注目されている言葉です。
未病の種類
西洋医学的な未病
境界域高血圧、高脂血症、境界域糖尿病、肥満、高尿酸、動脈硬化、骨粗鬆症、脂肪肝などがこれに当たるとされています。
「自覚症状はないが検査では異常がある状態」です。
東洋医学的な未病
冷えや肩こり、だるさ、食欲不振などの自覚症状がある場合です。なんとなく健康ではないなーと感じる場合です。病院で見てもらって明らかに病気である場合もありますが、「自覚症状があるけれど検査では明確にできない」状態の場合、未病と呼びます。
未病が注目されるのはなぜ
生活習慣病の予備軍を「未病」と捉えることもできます。すると日本人の5,000万人以上が未病となります。
生活習慣病は、糖尿病、高血圧、動脈硬化、高脂血症、不整脈、アルコール性肝障害、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胆石症、痛風、骨粗鬆症、そして歯周病も含まれますが、生活習慣の積み重ねによって発症・進行すると考えられている病気です。
生活習慣病は、日本人の全死因の6割を占める「がん・心臓病・脳卒中」に繋がる、正しく「未病」そのものであるからです。
未病への意識を高めることが大切です
「未病」を病気に進みつつある状態と捉え、早い段階で「未病」のサインを認識し対処をすることにより、その進行を抑え、本格的な病気への移行を防ぐことが健康寿命を延ばすことに繋がります。
元々の生命力を十分に活かす方向にもっていくように意識して、私たちの身体に備わっている治癒力・自己回復力が、その本来の力を発揮し始めるようにすることが大切なのです。
自覚症状の出ていない歯周病も未病の一つです
我々浅草の歯医者からすれば歯周病は、完全な病気との認識なのですが、口腔内は水分があり食べカスがあり暖かく、バイ菌のかっこうの住みかです。700種類以上の細菌が生息しており、管理状態が悪いと数兆匹にも達します。また、衛生的な人の口腔内に比べて歯周病が進行すると、レッドコンプレックスと呼ばれる極めて質の悪いバイ菌が増えていきます。この細菌は容易に血管内に進入し、血管内壁に歯垢(プラーク)を沈着させ、動脈硬化の原因になることが分かっています。腎炎や心内膜炎を引き起こす原因菌のひとつでもあります。またインシュリンの働きを阻害し、糖尿病を悪化させる原因、発がん性の物質を産生するなど、全身疾患の大きな原因となります。
噛み合わせの悪さなども、頭痛や肩こりの原因になることが多くあります。歯に自覚症状がなくても、ぜひ一度近くの歯医者さんで診てもらってください。