肥満のおよぼす健康被害
膝・腰への負担
歩くとき、膝には体重の2~3倍の荷重がかかります。走れば5倍以上になります。人間は二本足なので足にかかる負担は相当なものです。
肥満は、変形性膝関節症の原因となるなど、膝や腰への負担を大きくします。運動が出来なくなり、さらに肥満が進むという悪循環になります。
睡眠時無呼吸症候群
深い眠りにはいると、脳の指令能力が低下して、のどの呼吸路が閉鎖しやすくなり呼吸が一時的に停止してしまう無呼吸症候群という病気があります。肥満があると、首回りの脂肪が、気道を圧迫して呼吸路が狭くなりやすいため、最大の危険因子です。
無呼吸症候群は、自分ではほとんど自覚しない病気ですが、昼間の眠気など自動車事故の原因として問題になっています。また脳に対する酸素の供給がとどこおりやすく、認知症の原因としてもクローズアップされています。
心臓への負担
肥満になると、脂肪組織によぶんな血管が必要です。また脂肪により血管が圧迫され、心臓は、力をこめて血液を送らなければならなくなり、心臓に負担がかかります。
肥満の場合、心臓病の死亡率は普通体重の人の1.5倍の割合で高くなっています。
生活習慣病
高血糖、高血圧、高脂血症などさまざまな生活習慣病を引き起こした状態、「メタボリックシンドローム」の原因となります。
そもそも肥満とは
肥満とは「体脂肪が過剰に蓄積した」状況のことです。日本肥満学会は、肥満状況を「BMI」を使って診断しています。
BMIはBody Mass Index(ボディ・マス・インデックス)の略称で、「ボディ・マス指数」「体格指数」などと呼ばれることもあります。太っているか、やせているかといった肥満度を表す指標として用いられるBMIは、ベルギーの統計学者のアドルフ・ケトレー氏によって、1835年に開発されました。現在BMIは、世界共通の計算方法で国際的に用いられています。
計算式は以下のとおりで、身長はcmではなくmで計算します。
[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]
肥満の基準は国によって異なり、日本肥満学会は以下のように、BMIが25以上の場合を肥満と定めています。
日本肥満学会の肥満度判定基準
BMI | 肥満度判定 |
---|---|
18.5未満 | 低体重(やせ) |
18.5~25未満 | 普通体重 |
25~30未満 | 肥満(1度) |
30~35未満 | 肥満(2度) |
35~40未満 | 肥満(3度) |
40以上 | 肥満(4度) |
BMIは一応の目安です
同じ身長・体重でも、身体を構成している成分(筋肉質なのかなど)で違いがあります。お相撲さんは意外と体脂肪率が低いです。白鵬関は、身長192cm、体重158kg。日馬富士関は、身長185cm、体重133kg。ですが、それぞれの体脂肪率は、白鵬が25%、日馬富士が23%です。
大事なのは筋肉量と骨密度、体脂肪率
体脂肪率(たいしぼうりつ)とは、体内に含まれる脂肪の重量の割合のことですが、低ければ低いほど良い、というものではなく、低すぎると体温の低下や筋力の低下(筋肉を分解してエネルギーを作り出すため)を招くことがあります。女性の場合はホルモンバランスの異常から、生理不順や早発性閉経を招くこともあります。
筋肉量や骨量をしっかり維持することも大切なのです。
内臓脂肪生が活習慣病の元
内臓脂肪と皮下脂肪の違い
お腹の皮膚の下にあって、摘むことができるのが皮下脂肪です。一方、腹部の内臓の周りにあったり、肝臓の中にたまったりしているのが内臓脂肪です。構造的には差はありません。
しかし 代謝の点で、皮下脂肪と比べて、内臓脂肪は活発に活動しています。脂肪の出入りが激しいのと、生理的活性物質を多く作るのです。
メタボリックシンドローム
内臓脂肪症候群というのが日本語の名前です。内臓脂肪型肥満(腹囲が男性 85cm以上、女性90cm以上)に加え、高血糖、血中脂質異常、高血圧の3つのうち2つ以上を合併した状態が該当者です。また内臓脂肪型肥満に加えて3つのうち1つを合併した状態が予備軍です。
TNF-α
内臓脂肪が多く作る悪玉物質の一つは、腫瘍壊死因子(TNF-α:Tumor Necrosis Factor-α)という物質です。名前の通りに悪性細胞を攻撃します。ただ身体の細胞の糖分摂取を障害するという方法なので、過剰に反応すると、血糖値を下げるインシュリンの働きを悪くする副作用が強くでてしまいます。糖尿病の原因因子の一つと考えられています。
このTNF-αという物質は、歯周病菌がその産生に大きく関与していることがわかっており、脂肪細胞との強い相乗効果があるとされています。肥満が歯周病を悪化させ、歯周病が肥満を悪化させるのです。
PAI-1
血栓を作りやすくするPAI-1(plasminogen activator inhibitor-1)の産生も活発です。全身に作用すれば脳梗塞などの血栓症を起こしやすくする原因となります。
その他に血管の平滑筋の増殖を引き起こす物質も産生しており、動脈硬化を促進する事になります。血圧の上昇を来す物質も産生していて、高血圧症の原因となります。
内臓脂肪の増加は、糖尿病、血栓症、動脈硬化・高血圧症の促進につながり生活習慣病の原因なのです。
歯周病が肥満をひきおこす
歯周病菌のうち、質の悪いタイプをレッドコンプレックスとよんでいますが、これらのバイ菌の体表面にはリポ多糖という内毒素
(Lipopolysaccharide, LPS)をもっています。
この物質を、使った実験がフランスでおこなわれました。
LPSを4週間持続的にマウスの皮下に埋め込むと、それだけで肝臓と脂肪組織に脂肪の沈着が起き、体重が増加し、さらに高脂肪食を与えるとさらに増強され、糖尿病が発症したということです。(LPSを投与せず、高脂肪食のみの場合は体重増加は起こらなかった)
歯周病患者は、脂肪肝を示す血液検査結果が高値になることも解かっています。