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腫瘍マーカー

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腫瘍マーカーとは

 がんが進行すると、健康な人にはほとんどみられない特殊なタンパク質などが血液中に増加することがあります。この特徴的な物質は「腫瘍マーカー」と呼ばれ、血液検査で,がん診断の補助やがん手術後の経過観察などに非常に有効な手段になっています。

腫瘍マーカーの役割

 しかしながらがんがある程度の大きさになるまで陽性を示さないという性格があり,陰性であるからといってがんを否定できるものではありませんし,アレルギーなどの他の要因によって、がんに関係なく増えることもあり、これだけでがんの有無を診断することはできません。
 画像検査などとの組み合わせによって、がん診断の補助的役割と考えるべきです。繰り返し定期的に検査することで、その値が上昇したときにがん発見の重要な情報になりえます。

口腔領域での有用性

 口腔がんは、口の中の粘膜表面から発生するタイプ扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)が最も多く、約80%を占めています(残りの10%が唾液腺から発生するタイプ、10%が肉腫や悪性リンパ腫などです)。このためSCCなど扁平上皮がんに対する腫瘍マーカーが有用な可能性はありますが、実際には皮膚炎などでも上昇するため、口腔がんに対する特異性は低く、信頼性は高くありません。PET/CTなど他の健診方法が有効と考えられています。

腫瘍マーカーが異常値を示したら

腫瘍マーカーの基準値は、他の血液検査と同じように、多くの人の測定値をもとに決められています。そのため、中にはがんが存在していなくても腫瘍マーカーが上昇している人や、がんが存在していても腫瘍マーカーが上昇しない人がいるように、正確にがんの動きを反映しているわけではありません。
 そのため、健診等で腫瘍マーカーが基準値を超えていたからといって、必ずしもがんが存在しているとは限りません。腫瘍マーカーで「要精密検査」という結果が出ても、必要以上にあわてず心配せずに、精密検査を受けましょう。そこでCT、超音波検査、組織検査などを行い診断します。

腫瘍マーカーの種類

 30種類以上が発見、利用されています。おもなものを上げていきます。

CEA

CEAは、がん胎児性抗原といい、代表的な腫瘍マーカーで現在もっとも多く測定されています。

大腸がん、膵がん、胆管がん、肺がん 陽性率50~70%
食道がん、胃がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、泌尿器がん 陽性率30~50%

がん以外でも結構上昇します

肝炎、肝硬変、膵炎、潰瘍性大腸炎、胃潰瘍、糖尿病、膠原病、肺気腫、甲状腺機能低下症、腎不全、加齢、喫煙 などでも上昇します。

CEA値(ng/mL)

0.1~5.0 正常値
5.0~10.0 軽度上昇 高齢者、喫煙、良性疾患(悪性腫瘍も否定できず)
10.0~20.0 中等度上昇 悪性腫瘍を疑い良性疾患はまれ
20.0以上 高度上昇 悪性腫瘍が強く疑われ、リンパ節や他臓器への転移も疑われる

SCC抗原

SCC抗原(扁平上皮癌関連抗原)は、子宮頸部扁平上皮癌組織の肝転移巣から抽出された腫瘍マーカーです。血清SCC抗原は子宮頸がん、頭頸部がん、食道がん、肺がんなどの扁平上皮がんで高値が認められます。

子宮頸部がん 肺がん 頭頸部がん 食道がん 皮膚がん
異常高値 51% 62% 34% 30% 80%

がんの早期発見にはむかない検査です

初期がんでの陽性率は低く、がんの早期発見を目的とした検査には適しません。SCC抗原の血中濃度半減期は短く、病状変化に伴う変動が速やかで治療の効果判定に効果的です。また再発例では臨床症状の現れる数週間前に血中濃度が上昇することが多く、がんの再発のチェックに有用です。

がん以外でも結構上昇します

SCC抗原は正常な扁平上皮にも存在しているため、アトピー性皮膚炎や天疱瘡、乾癬などの皮膚疾患、気管支喘息や気管支炎、肺炎、結核などの肺疾患、腎不全、透析患者、喫煙者などでも上昇します。またSCC抗原は肝細胞や胸腺細胞にも発現するため、肝炎、肝硬変でも陽性となります。 
 また、皮膚表面や汗、唾液にも大量に存在するため、採血の際にうまく血管に入らず、穿刺しなおした場合もこれらの混入をおこすことが多いので注意が必要です。

基準値

2.0ng/mL 以下  

CA19-9

 CA19-9 は、モノクローナル抗体が認識する糖鎖抗原です。胎児では唾液腺などで多量に産生され、正常成人でも微量に検出されます。
特に膵管、胆管、胆嚢、胃、唾液腺、気管支腺、前立腺、結腸などの上皮細胞に見出されるため、それらのがん化に伴い大量に産生され血中レベルが上昇します。

膵がん 胆道がん 大腸がん
異常高値 80% 70% 40%

胃がん、肝がんでも上昇します。
日本人の10%は、CA19-9を産生できないので、まったく上昇しない場合もあり、注意の必要があります(ルイス抗原陰性者)。

がん以外でも結構上昇します

 
 胆管炎・胆石や膵炎、胃炎、肝炎、肝硬変 卵巣嚢腫、気管支拡張症、気管支嚢胞、溶連菌感染症などの疾患でも100U/mLを超える異常高値となることがあります。
子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣嚢腫、気管支拡張症、気管支嚢胞、肺結核、10~20代の女性や妊婦、糖尿病でも軽度上昇することがあります。慢性胃炎治療薬の「スクラルファート」を内服しても上昇します。

がんの早期発見にはむかない検査です

 早期がんでの陽性率は低くスクリーニングには不適です。治療の経過観察や再発のモニターとして有用です。

基準値

37 U/mL 以下

PSA 前立腺特異抗原

PSA(前立腺特異抗原 prostate specific antigen)は前立腺にのみ存在する糖タンパクで、前立腺がんの腫瘍マーカーとして最も利用されています。健康な男性の血中にも微量存在します。
前立腺がんだけでなく、前立腺炎や前立腺肥大症などの疾患でも上昇します。また、尿道操作や前立腺マッサージなど前立腺に刺激を与えても上昇します。
カゼ薬、胃腸薬などによってはPSA値を上昇させるものがあります。
このため、PSAが高値となった場合は、数日以上おいて再検査を行います。再検査でも高値の場合は、前立腺触診、前立腺超音波検査などを行い、がんが疑われる場合は、組織検査にて確定診断を行う必要があります。

ng/mL 0~2 2~4 4~10 10以上
前立腺がんの確率 1% 15% 25% 50%
基準値

4.0 ng/mL 以下

超高感度PSA

 
最近では測定限界が0.01ng/mL以下の超高感度測定もできるようになりました。これにより、前立腺摘出手術を行った後に、早期の再発を見つけることが可能になりました。

PSAグレーゾーン

 
PSAが4.0~10.0ng/mLは、グレーゾーンといわれ、前立腺がんと良性の疾患がほぼ半数で存在します。
非がんではたんぱくと結合していない遊離型PSAが多いことから、遊離型/総(F/T)比を検査することで、前立腺癌の確率を推定できます。PSA値が高いほど、F/T比が低いほど前立腺がんの確率は高くなります。 PSA F/T(%)0~10だと前立腺がんの確率56%  11~15だと前立腺がんの確率28% 16~20だと前立腺がんの確率20% 20~25だと前立腺がんの確率16% 25~だと前立腺がんの確率8% です。

がんの早期発見に有用な検査です

スクリーニング検査のなかで、もっとも精度が高く、簡単に行うことができます。1.0ng/mL以下でも3年に1度は検査を、1.1ng/mL~基準値(50~64才は3.0ng/mL以下・65~69才は3.5ng/mL以下・70~才は4.0ng/mL以下)の場合は毎年の検査をお勧めします。

PAP

PSAと同じく前立腺癌マーカーです。ただしPSAとは物質的に異なるため、組み合わせによる正診率の向上が期待されます。

原発性肝細胞がんの腫瘍マーカー

AFP、PIVKA-II、AFP-L3% があります。早期がんの場合、それぞれの陽性率は22%、34%、17%と感度が低いため、2種類以上の腫瘍マーカー測定と定期的な超音波検査が推奨されています。

AFP

AFP(α-フェトプロテイン)は、胎児血清中に発見された糖タンパクです。肝細胞がん、転移性肝がんなどで高値を示します。
AFPは慢性肝炎や肝硬変などのがん以外の疾患でも上昇することから、AFPのみではがん以外の肝疾患と肝細胞がんの鑑別は困難なことが多いため、超音波検査や、下記の腫瘍マーカーとの組み合わせが重要になります。
また胃がんの特殊な型にAFP産生胃がんがあり、これらにも陽性になります。

AFP-L3%

AFP の糖鎖変異をとらえるフコシル化AFP 分画のことです。AFPは1分子あたり1個の糖鎖を有していますが、がん化に伴う糖鎖の変化をレクチン(LCA)との結合性を利用して検出するのがAFP-L3分画比(AFP-L3%)検査です。肝細胞がん特異性が高いため、その陽性化(一般には10%以上)は診断的価値があるとされています。しかしながら早期段階ではこのマーカーの陽性率が低いことから他の腫瘍マーカーと組み合わせてつかわれます。
 肝細胞がんと診断されて治療を行った結果、AFP-L3%が陰性化しない場合には腫瘍の残存している可能性が高く、陰性化しても再び陽性化する場合は再発の危険性を強く疑います。
また、肝細胞癌でAFP-L3%が陽性の場合、予後不良といわれています。

PIVKA-II

血液凝固因子の第Ⅱ因子であるプロトロンビンというたんぱく質は、肝臓で合成されるのですが、ビタミンKを必要とします。この合成にビタミンKが不足していると凝固活性を持たない異常タンパクPIVKAⅡになります。PIVKAⅡはビタミンK欠乏時に出現しますが、肝臓がんでも出現することから腫瘍マーカーとして利用されています。規準範囲は40mAU/mL未満です。肝臓がん以外では、閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ滞でも上昇します。
 上記の、肝臓がんの腫瘍マーカーであるAFPとは相関性のまったく無い特異的なマーカーなので、AFPとPIVKA-IIをコンビネーションで測定することで原発性肝臓がんの診断率が向上します。

CYFRA 21-1

ヒトサイトケラチン19フラグメントという腫瘍マーカーです。肺がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん・小細胞肺がん)鼻咽腔がんで上昇します。特に扁平上皮がんで敏感に反応するとされています。
非小細胞癌症例に対する検出感度は41~65%です。健常人のCYFRA21-1値は0.6±0.5ng/mlです。

NSE

神経特異エノラーゼといい、解糖系酵素の一種です。肺小細胞がん・脳腫瘍・インスリノーマ、甲状腺がん・カルチノイドなどで上昇し、特に、肺小細胞癌で60~80%、小児の神経芽細胞腫で70~80%と鋭敏に反応します。神経組織にもともと多量に存在するので、下垂体、甲状腺、副腎皮質、膵、肺、腸管などに分布する神経内分泌細胞組織から発生した腫瘍ではNSEが高くなります。
規準値は16.3ng/mL以下です。

エラスターゼ1

エラスターゼはタンパク分解酵素の一つで、結合組織であるエラスチンを分解する作用を持ちます。主に膵臓で産生されます。エラスターゼ1は膵がんで血中に漏れ出して、濃度が極めて増加します。また急性膵炎や慢性膵炎でも高率に増加するので、膵がんや急性膵炎、慢性膵炎の診断補助の指標として用いられます。基準値は300ng/dL以下です。
前記の、CA19-9 の高値は膵臓の進行がんに多いことから、同時測定により早期から末期のがんを幅広く捉えることができます。

CA125

CA125は、卵巣漿液性のう胞腺がんの培養細胞株を用いて作られたモノクローナル抗体認識抗原です。
卵巣がんの腫瘍マーカーとして日常最も汎用されています。
卵巣がんで約80%、特に卵巣漿液性嚢胞腺がんでは97%の陽性率を示します。
子宮内膜症の診断にも有用で、進行とともに陽性率が高くなり、重度の場合70~80%の陽性率を示します。膵がんでも50%の陽性率をしめします。基準値は35U/mL以下です。
主に卵巣がんの腫瘍マーカーとして有用ですが、腹膜炎、胸膜炎、肝硬変などでも陽性が多く見られます。また子宮内膜症や内膜症性のう胞で高率に上昇するので、子宮内膜症の診断補助に利用されます。

CA15-3

CA15-3は、ヒト乳汁脂肪球膜、乳癌の肝転移細胞膜に対する2つのモノクローナル抗体認識抗原です。
CA15-3は、乳がんにおいてステージⅣでも陽性率が40%以下と高くはありません。しかし乳がん再発や転移では50%~70%程度の高い陽性率とされているため、、乳がん再発モニタリングとしての有用性が高い腫瘍マーカーです。基準値は25 U/mL 以下です。
乳がn以外での陽性率は肺がん、膵がん、胃がん、腎がん、子宮がんなどで20%前後、卵巣がんで40%前後とされています。

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