口の中をうるおしている唾液の分泌が減ってしまい、常に口の中が乾燥した状態です。体の水分が不足したなどの一時的な原因ではなく、3ヶ月以上続く病的な状態です。
口臭や口の中の痛み、ただれ・ひび割れ、出血などの症状をともなうこともあります。
口腔乾燥症の症状
軽度では主に口の中のネバネバ感、虫歯、歯周病の進行、舌の表面に汚れがたまる。口臭も現れます。
重度になり唾液分泌量がさらに低下し口腔内の乾燥が進行すると、口内炎ができやすかったり、強い口臭、舌表面がひび割れ、舌痛症を生じます。痛みで食事がとれない摂食障害、会話時にしゃべりづらいなどの発音障害も現れます。不眠症の原因になることもあります。
原因は
直接的な原因は唾液の分泌減少です。唾液は一日1.5リットルも分泌されると言われており(実は800cc 程度ではないかという説もあります)、この唾液が何らかの原因で減少してしまうと口の中が乾燥します。
唾液はとても働き者です
口の中の食べかすやバイ菌を洗い流して、口腔内を清潔に保つ
唾液そのものに殺菌成分が入っているので、口腔内の細菌の増殖を抑える
口腔内の衛生状態を保つことにより、口臭を予防する
頬をや舌の動きを滑らかにし、しゃべることが円滑になるビスケットなどの乾いた食べ物に水分を含ませ食べやすくする
バイ菌の出す酸などを中和し、虫歯を防ぐ
酸によって溶け出したカルシウムを歯に戻して修復する再石灰化作用
食べ物を唾液に溶かして味覚を感じやすくする
食欲を亢進させる
など、非常に重要な働きをしています。
日常生活に起因するもの、そして対応法
やわらかい食事
食べ物をよく噛み顎を使っていれば、顎の筋肉のすぐそばにある、唾液腺も刺激されます。食べごたえのある食品が少なくなった近頃の食生活では、あごや舌の筋肉が衰えてしまい唾液の分泌量が少なくなります。
ただ、強く噛めば良いというわけではありません。現代人は忙しいために早食いの習慣がついてしまっています。強くかみすぎると、実は歯を痛めます。ある程度の時間をかけてゆっくり優しく食べることも大切です。
会話が少ない
しゃべることも、顎を動かします。口をあまり開けずに早口でぼそぼそしゃべると唾液腺が刺激されません。口をある程度大きく開けてはっきりしゃべることが大切です。
過度の飲酒
アルコールを飲むと、アルコールを尿や汗と一緒に排出しようとする利尿作用が働きます。体内は脱水状態になりやすいのです。アルコールの飲みすぎが続くと、体内の水分バランスが崩れ、体は常に脱水の状態になります。血液中の水分を漉して作られるのが唾液ですから、原料がなければつくれません。実は健康に良い飲酒はビールならば一日100cc 程度と言われています(^_^;)。飲みすぎにはくれぐれもお気をつけください。
肥満
適正な体脂肪率は 男性=15‐19%・女性=20‐25%です。脂肪はいたるところにつきますが、頬んにもたまります。頬に脂肪がたまりすぎると唾液線を圧迫し唾液腺の機能が低下します。また実は脂肪はとても水を貯めにくい組織です。意外ですが筋肉は水の保持力が非常に強いです。筋肉量の少ない人も体内の水分量が少なく脱水になりやすい体質です。
自律神経のバランスの悪さ
日中活発に働き緊張や興奮の神経と言われる交感神経、そして休んでいるときに働くリラックスの副交感神経、この二つを合わせて自律神経と呼びます。
手や足を動かすことは意志で行いますが、心臓の動きを早くしたり遅くしたりは自律神経によって調節されています。この自律神経の働きをバランスよく整えることで内臓の働きが整い私達の体は健康でいられるのです。
唾液は、交感神経が緊張すると分泌が抑制され、副交感神経が働くと分泌が促進されます。
ただ、この自律神経の活動はどちらか一方がすぐれていれば良いというものではなく、バランスの問題ですので、詳しくは早めに Page UP したいと思います。
ストレス
動物園に行けばわかりますが、意外とライオンは寝てばかりです。狩り費やす時間はそれほど長くなく、一般的な動物はそれほど多くなストレスを長時間受けていません。サル山を見てみただけではわかりますが、いつもにぎやかです。おサルの頂点にいる人間がストレスを受けやすいのは明らかです。
リラックスしているときは唾液が出やすく、逆に精神的に緊張したとき・ストレスがあるときは唾液が出にくくなります。特に精神的なストレスは、唾液減少が長く強く続きます。神経症やうつ病でも、交感神経が優位となりやすく唾液量が減少することがあります。
鼻の病気
鼻で呼吸ができないと、どうしても口呼吸になります。空気が行ったり来たりするのですから、口腔粘膜は乾燥します。
口の周りの筋肉の衰えは当然ですが、全身の筋肉が衰え姿勢が悪くなり猫背であごが前に出ると、鼻呼吸がしにくくなり、また常に口を開けた状態になるため、ドライマウスになりやすくなります。
加齢
「お年のせいですね」お医者さんや我々歯医者も、よく使ってしまう言葉です。
体に気を使っているかそうでないかは、若いうちはほとんど関係ありません。でも年齢を重ねるごとに余力が低下していきます。
例えば大腰筋は20歳をピークに年1%程度減少し、60代以降は急激に減少してしまいます。加齢とともに減少していく筋肉量を運動することで維持することも大切です。
運動しない20歳とランニングを6年以上継続している69歳の持久力は同等レベルであるというコロラド大学の研究もあります。
年齢よりも相対的に、若い体と心を持つことも大切です。
服用している薬による副作用
薬の副作用でドライマウスが起きることがあります。花粉症の治療などに使われる抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、抗うつ薬や向精神薬、高血圧の薬、利尿薬など、原因となる薬の種類は多岐にわたります。副作用で「口渇」とあるのが、これにあたります。高齢者にドライマウスが多くみられるのは、服用している薬が多く、その副作用も原因の一つと考えられます。
安易な素人判断で薬の服用をやめないでください
使われている医薬品について疑問を持たれた場合には、医師・歯医者または薬剤師に必ずご相談ください。
医療用医薬品は、患者ご自身の判断で用いたり、中止したり、医薬品の用法・用量を変えたりすると危険です。どのような薬にも、目的とする作用のほかにできれば出て欲しくない副作用もあります。体質によりこの副作用が出やすかったりでにくかったりもします。口腔乾燥などの副作用を疑われる場合には、ご自身で勝手に判断せずに必ず医師・歯科医師・薬剤師などの専門家に相談してください。
全身的な病気の一つの症状として口腔乾燥症が出る場合
ドライマウスを引き起こす主な疾患には、糖尿病・脳卒中・シェーグレン症候群やホルモンの異常やバランスの崩れによって起こる更年期障害があります。また、頭頸部のガン治療による放射線療法や抗ガン剤によっても起こることがあります。
糖尿病
糖尿病は膵臓でつくられるインスリンの分泌や作用が低下し、血糖値が慢性的に高い状態になる生活習慣病です。糖尿病により高血糖状態が続くと、血液のブドウ糖濃度が高くなり浸透圧が上がります。浸透圧は、濃度の異なる液体が接した場合、濃度の低いものが高い方へ拡散して濃度を一定にしようとする働きです。そのため、浸透圧の低い体内組織から血液中へ水分が引っ張られます。糖を含んだ尿が大量に排出されるため体内が脱水状態になり、体の水分不足により唾液の分泌も減少します。口やのどが渇き、水を欲するようになるのはこのためです。
くも膜下出血、脳出血、脳梗塞の後遺症
口腔領域の感覚や運動をつかさどっている神経は三叉神経と言いますが、この神経に麻痺などが起こると、口の周りの筋肉も麻痺したり、唾液腺への脳からの指令がうまく伝わらず、唾液が減少し、ドライマウスを引き起こすことがあります。
更年期障害
閉経の前後、約10年間の更年期を迎えると、女性ホルモンのバランスが急激に変化します。疲れやだるさ、肩こり、のぼせやほてり、イライラや不安感などの症状があらわれることがあります。唾液の分泌は女性ホルモンのコントロールも受けているため、口腔乾燥症の原因になることがあります。
ガンの治療による放射線照射や抗ガン剤の影響
抗癌剤や放射線治療を行うと、唾液腺の働きが弱まって口の中が乾燥しやすくなります。特に放射線治療の場合、治療が終わった後も長期間続くことが多くあります。
シェーングレン症候群
1933年、スウェーデンの眼科医、ヘンリック・シェーグレンが初めて乾燥性角結膜炎(涙の分泌が少ないために目の表面に細かい傷がつく状態)として論文を発表しました。
体は細菌やウイルスなどの外敵から身を守るために免疫という力があります。ところがこの免疫が狂ってしまい、自らの正常な細胞を攻撃してしまうことがあります。これが自己免疫疾患です。シェーグレン症候群もこの自己免疫疾患の一種であり、目においては涙腺を冒し涙の分泌を障害し、口においては唾液腺を冒し唾液の分泌を障害します。 シェーグレン症候群は、四〇歳以上の中年女性に多く、男女比は一対九といわれています。
目の症状
シェーグレン症候群の最も重大な症状で、これは涙の分泌の減少によるものです。目が疲れる、めやにが多く,ごろごろする,痛む,膜がかかったようにかすむ、まぶしい、朝、目が開けられない,といったものがその症状です。
口腔症状
自己免疫現象により自らの唾液腺が破壊され唾液の分泌が減少することにより起こる症状です。口が乾燥するだけでなく、味覚がなくなる、口唇や口角がひび割れる、口内炎ができやすい、といったものがあります。また乾燥は喉までに及び食べ物が飲み込みにくくなったり、声がかすれたりすることもあり、口腔乾燥症の中でもかなり重症の症状が出ます。舌乳頭の萎縮がおこり、舌が平らになることも特徴です。
それ以外の症状
関節痛は関節リウマチの典型的な症状ですが、シェーグレン症候群もこの症状を呈します。関節リウマチとシェーグレン症候群だ合併することも多くあります。
膣にもバルトリン腺という膣を滑らかにする分泌腺があります。この分泌が低下し、膣乾燥症が起こります。これは性交時の痛みの原因になり,また正常細菌叢を破壊するため膣炎の原因となります。
対処法
がんと診断され、治療中、あるいは治療後の方や、シェーグレン症候群の方、大変な思いをされ、本当に御苦労様です。「なぜ自分だけがこのような病気に」と思われると思いますが、病気の種類は100万種類以上あると言われています。病気から完全に残れることはできないです。我々浅草の歯医者も、できる限り辛い思いを少なくして差し上げたいと願っております。これから具体的な方法をお話していきたいと思います。
唾液の分泌を促す
炭酸水・レモン水、果物の小片などを口に含む(冷凍した果物のシャーベットなども良いです)。
ガムなど何か口にくわえる。
味覚を刺激し唾液の分泌を促すのはとても有効です。ただしやりすぎると逆に口腔粘膜を荒らしてしまうことにつながるので注意してください。
唾液腺のマッサージ
頬をに広く手のひらを当てて、円を描くように、1秒間に1回転程度のゆっくりとしたスピードでマッサージしてあげてください。1回30秒ぐらいでも充分ですので、一日数回で構いません。
洗口剤や口内炎の薬はご注意ください
マウスウォッシュと呼ばれる洗口剤にはアルコールが含まれているものも多く、若く健康な人向きで刺激が強く、返って唾液の分泌を抑制してしまうものが多くあります。
また、口内炎の薬にはステロイドなども入っているものも多くあり、殺菌性の洗口剤も注意が必要です。長期間使用していると口腔内の細菌のバランスが乱れ、口腔粘膜と調和している善玉菌を減らしてしまったり、カンジダ菌などのバランスが取れていれば問題にならないような、いわゆる菌交代現象が起こり、かえって病態がひどくなることもあります。
オーラルバランス
バイオティーンは唾液に含まれる酵素ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシターゼ、リゾチームやラクトフェリン、保湿成分を配合した極めて刺激性の少ない、乾いた口を潤す保湿剤です。洗口剤(マウスウォッシュ)や乳液タイプもありますが、ジェルタイプが一番持続性があります。
清潔な指に1センチ程度取り口の中に振り込んでいただき、舌や指で口腔内にまんべんなく広げてください。一日4、5回行うと良いでしょう。
口腔用ジェル うるおいキープ
和光堂から販売されている、食品原料のみから作られている保湿剤です。ノンアルコール・無香料・パラベンを使用していません。こちらもかなり使いやすいと思います。
マウスピース
夜寝るときに口蓋(上あご)おおおように装着するものです。口蓋から分泌される唾液の蒸発を抑え乾燥から防ぎます。歯医者さんで作ってもらうことができます。マウスピースの違いに保湿ジェルを塗ればより効果的になります。
夜間口呼吸防止テープ
眠るときに唇に貼るテープです。睡眠中に口呼吸によって唾液が蒸発するのを防ぎます。様々な形が市販されています
トライマウスの自己診断
□ 口の中の乾燥や喉の渇きがある
□ 口の中がヒリヒリするような痛みがあることがある
□ 口の中がねばねばするような事が多い。
□ おせんべいやビスケットなど乾いた食べ物が食べにくい。
□ 味を感じにくい。
□ 夜、口が渇いて目が覚めることがある。
□ 口内炎ができやすい。