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嘔吐反射(えずく)おえっとなる

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 嘔吐反射(おうとはんしゃ)は「えずく」ともいいますが、本来、身体に備わった正常な反応です。
正常な嘔吐反射は、喉の奥に異物が入ったとき、異物が食道へ入らないようにするために起こります。ノドのところに異物がいつまでも居座っていたら、呼吸ができません。また異物が肺に落ち込む危険もあります。これを追い出していまおうという防御反応によって起こります。
 ただ、通常ノドの奥のほうだけにある反射なのですが、手前の方、つまり口の中でおこるとトラブルの原因になります。
 歯の治療で型どりなどで「おえっとなる」デンタルミラー(歯の治療の小さな鏡)を口の中に入れただけで嘔吐反射がおこる人にとっては、歯科治療が憂鬱(ゆううつ)になる原因でもあります。
「歯みがきをするとおえっとなって歯みがき出来ない」と日常の生活に支障をきたす人まで、さまざまです。歯科関係だけでなく、Yシャツの一番上のボタンをとめられない・ネクタイが苦手・美容室で首に巻かれるタオルがだめで悩んでいる方も実は結構多くいます。
 逆流性食道炎など胃腸の病気や肥満、妊娠などが原因でおこりやすくなる場合もあり、隠れた病気にも注意が必要です。また、歯周病の原因の一つでもあります。

基本的に、食べ物は平気です

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不思議なことに、食事で嘔吐反射はおきません。(脳梗塞などの後遺症で出る場合はありますが)
専門的には異常絞扼反射(いじょうこうやくはんしゃ)といいます。過剰な嘔吐反射は、過去の歯医者でのトラウマや精神不安定、緊張など、心理的なものが原因であることが多いです。また心理的に負荷がかかる特定の環境下でのみ起こるので、飲食などには影響がないのが特徴です。

もともと胃がむかむかするなどの吐き気があるとちょっとした刺激でおきます

吐き気(はきけ)は、腹部上部に不快感を覚え、嘔吐したくなる症状を促す感覚です。嘔気(おうき)悪心(おしん)ともいいます。むかつきもこれに近いです。 延髄にある嘔吐中枢によって制御され、毒物を食べたりした場合に身体を防御するためにおこる、胃の中の物を吐き出したい感覚です。

吐気(嘔気)の原因

 身体そして精神の両方が原因となります。体は消化管が関係している場合が多いですが、思わぬ病気が隠れていることもあり注意が必要です。

病気によっておこるもの

胃腸の病気 逆流性食道炎、胃酸過多、胃炎・胃潰瘍、胃がん、盲腸(虫垂炎)、腸閉塞など
頭の病気 脳梗塞、くも膜下出血、脳腫瘍、偏頭痛、髄膜炎、小脳出血など
その他 胆石、胆のう炎、糖尿病、メニエール、緑内障、心筋梗塞、肝炎、膵炎、食中毒など

 消化管が原因の場合が多いんですが、嘔吐反射中枢が刺激されるケースには。関係ないように思える病気もあります。ただこれらは多くの場合、頭痛やめまい、腹痛など、他の症状を伴っていることが多いです。しかし
何となくムカムカして気持ち悪いという症状だけで心筋梗塞だった症例の報告もあり注意するにこしたことはありません。

時には救急車が必要な場合も

激しい嘔吐があり、水分を摂ることもできない
吐いたものに血が混じっている
強い腹痛・頭痛、まひ、しびれ、ふらつきなどがある

など、異常な場合は急ぎ救急病院等への受診が必要です。
嘔吐を繰り返したり、吐き気が長く続く、発熱・下痢などの症状があるなどの場合は、早めに内科など専門医への受診をお勧めします。

急に起こる吐き気の原因

急性胃腸炎

ノロウイルスやロタウイルス、黄色ブドウ球菌や病原性大腸菌などで起こる感染症です。不衛生な生ものや加熱が不十分なものを食べたなどが原因になります。

急性胆嚢炎・胆石発作

発熱や背中の痛み、右上腹部の鈍痛などの症状を伴うことが多いです。食後1時間ほどで症状があらわれその後治まってしまうことを繰り返すことがあり、なんとなく病院に行きそびれやすいので注意が必要です。

虫垂炎(盲腸)

吐き気や腹部の違和感やみぞおちの痛みなどが初期症状として現れますが、徐々に右下腹部や下痢などの痛みが出るようになることもあります。放置すると腹膜炎など重篤化するので早めの受診を。

腸閉塞(イレウス)

お腹が張る、便秘、腹痛などの症状は容易に想像できると思いますが、吐き気も多くみられる症状です。

重度糖尿病

 糖尿病が悪化すると、インスリンが不足し糖を代謝できなくなります。体はやむを得ずエネルギーを作るために脂肪を分解するのですが、ケトン体が生成され、血液の酸性度が高くなりすぎます。これを糖尿病性ケトアシドーシスと言いますが、吐き気が起こることもあります。入院が必要なほど糖尿病が重篤な状態です。

緑内障

眼圧が上昇し、そのために視神経が死滅してしまう病気です。視野が狭くなったり、視力が低下したり、放置すると失明に至ることもあります。緑内障の中には眼圧が急上昇するタイプがあり、目の激痛、頭痛や吐き気、嘔吐などの症状が起こり、光の周りに虹がかかったように見えることがあります。このような場合には早急に処置をしないと、失明の可能性が高くなります。至急眼科へ。

長く続く吐き気の原因

 食道や胃は、沈黙の臓器の肝臓などに比べて、きわめて自覚症状を強く主張する臓器です。
オエッとなりやすい(嘔吐反射が起こりやすい)方の多くが、上部消化管のトラブルを抱えています。 歯科治療中にえずきやすく消化器内科へ紹介する場合もかなり多いです。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

ピロリ菌・鎮痛剤・ストレスなどが原因で起こると考えられています。胃酸は食べ物の消化には欠かせないもので、食事をしている時に活発に分泌されます。しかし空腹時にまで多量の胃酸が分泌されてしまうと、その強い酸性にさらされた胃の粘膜が障害を受け、痛みとして現われてきます。強い胃酸と消化酵素によって胃や十二指腸の粘膜が局所的に欠損してしまうのが潰瘍です。胃もたれや吐き気、食欲不振をともないます。胃酸過多症は胃液の酸度が異常に高くなって起こります。慢性胃炎や消化性潰瘍に伴って起きることが多いです。
 胃潰瘍は食事中から食後にかけてみぞおち周辺に重苦しい痛みが起こりますが、十二指腸潰瘍は早朝や空腹時にみぞおち周辺がシクシクと痛み、食事を食べると治まるのが特徴です。

胃がん

 胃がんは、日本で一年間に約135,000人が胃がんと診断されます。男性に多い傾向にあり、50歳ごろから増加して、80歳代でピークを迎えます。男性では最も多く、女性では乳がん、大腸がんに次いで3番目に多いがんです。
 原因としてピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染、喫煙があります。その他には、食塩・高塩分食品の摂取が、発生する危険性を高めることが報告されています。
胃がんは、早い段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合があります。
 代表的な症状は、みぞおちの痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。また、胃がんから出血することによって起こる貧血や、便が黒くなるなどもあります。

慢性胃炎

慢性胃炎とは長期にわたり胃炎が持続している状態のことです。ピロリ菌の長期感染によりその毒素が原因と考えられています。長期に胃炎が持続すると、胃粘膜は菲薄化していき血管が透けて見えるようになり、委縮性胃炎と呼ばれます。
症状としては、上腹部の不快感、膨満感 食欲不振などがあります。胃酸を分泌する細
、胞が壊され胃液が十分に分泌されなくなると、食べ物が消化されにくく食欲不振や胃もたれの原因になることもあります。胃がんが発症する可能性が高くなる病気なので、定期的な内視鏡の検査および、ピロリ菌の検査・除菌処置をお受けになることを強くお勧めします。

逆流性食道炎

 胃の中の食べ物や胃液が食道に逆流してしまう病気です。胃液は強い酸性のため、食道に逆流すると、食道の粘膜を刺激して食道の粘膜がただれたり、潰瘍ができたりします。
食道と胃のつなぎめを噴門(ふんもん)といいますが、この部分の筋肉、下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)の筋力が低下してしまうと、胃液の逆流を防ぐことができなくなり、胃の中のものが食道に戻ってきてしまいます。
 高齢者の病気と考えられていましたが、最近では若い人にも増えています。

めまいを伴う耳の病気

耳が原因で、発作的なめまいや吐き気が繰り返し起こる病気にメニエール病や良性発作性頭位めまい症などがあります。
 メニエール病では、自分や周囲がぐるぐる回るめまいと、どちらか一方の耳にだけ起きる耳鳴り、そして難聴の3つが同時に起き、多くの場合、強い吐き気や嘔吐をともないます。過労やストレスが引き金になることがあります。命にかかわるような危険な疾患ではありませんが、放置すると耳鳴り・難聴が進行します。
 突発性難聴は、突然に片方の耳に強い耳鳴りと難聴が起こり、その約半数がグルグルと回転する、吐き気をともなうめまいに襲われます。重症例では、耳がまったく聞こえなくなります。発作は一度きりで繰り返すことはほとんどありません。ウイルス感染や内耳の血流障害が原因と考えられ、過労やストレスが引き金と考えられています。
良性発作性頭位めまい症は、ベッドに寝たりベッドから起きたりするときに30秒から1分程度の回転性めまいとしてみられます。難聴、耳鳴や手足のしびれなどの他の神経症状を伴いません。 また、首を後ろにそらしたり、後ろを振り向いたりしたときにも浮動感として感じる人もいます。美容院で頭をさげてシャンプーをしたり、歯科診療の際に仰向けに寝たりする時にも同様の症状がおきる場合があります。
吐き気に伴ってめまいがある場合には、一度耳鼻科受診も必要です。

うつ病やうつ状態

 気分が落ち込んだり、気力が出ない状態がつづくと、体そのものに不調を感じることも多いです。体の症状のひとつとして吐き気や嘔吐があらわれる場合があります。

心因性(ストレス)による吐き気

 精神的なストレスや過労が引き金となって自律神経が乱れると、心や体に不調があらわれます。不安や緊張、抑うつなどの心のトラブルにより、吐き気だけでなく多汗、全身の倦怠感、頭痛、肩こり、手足のしびれ、動悸、不整脈、めまい、不眠などの症状があらわれます。あらわれる症状は人によってさまざまで、大きく違うのが特徴です。神経性胃炎・過敏性腸症候群(腸のぜん動運動が異常になり、腹痛や下痢や便秘などを引き起こします。ときに下痢と便秘が交互に起こることもあります。何週間もつづいたり、検査で異常が認められないなどが特徴です)などの胃腸の不調から二次的に吐き気がでやすくなることも多いです。

自律神経失調症

 精神的なストレスや過労が原因で、交感神経と副交感神経(二つ合わせて自律神経)のバランスが乱れ、心や体に不調があらわれた状態です。不安や緊張、抑うつなどの心のトラブルから、吐き気、多汗、全身の倦怠感、頭痛、肩こり、手足のしびれ、動悸、不整脈、めまい、不眠などの症状はさまざまです。過呼吸症候群(過換気症候群)に伴う吐き気も多く見られます。
他の症状が見られず、吐き気やえずきやすくなる(おえっとなる)だけの症状の場合もあります。

生活習慣や服用している薬の影響

暴飲暴食、アルコールの飲みすぎ


食べすぎ・飲みすぎで、胃に負担がかかると、胃の粘膜に炎症が起きて、痛みや胸やけ、吐き気などの症状が起きます
 道路の車の渋滞と同じで、胃に過量の食べ物があると、消化が間に合わないので吐き出して排除したいという嘔吐感が生まれるのです。
 また、アルコールを飲みすぎることによって、肝臓がアルコールを分解する過程でできる有害物質(アセトアルデヒド)の解毒が間に合わなくなり、防御反応として吐き気、嘔吐が起きます。

乗り物酔いなど

乗物の揺れ(不規則な加減速)が、内耳のある三半規管をランダムに刺激することによって、自律神経系や平衡感覚の乱れを引き起こし起こります。
乗り物が動いているのに本やスマホなど動かないものをじっと見るなど、目からの情報と体に伝わる動きの情報が一致しない事が原因で起こります。

鎮痛剤

 痛みを引き起こす物質の一つに「プロスタグランジン」というものがあります。この合成をお抑えれば、痛みを和らげることが可能です。この薬が代表的な鎮痛剤である、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAD)です。しかしプロスタグランジンは「痛み物質」であると同時に、胃腸では「胃の粘膜を保護」する物質としての役割があります。プロスタグランジンをおさえると、頭痛などの痛みは抑えられますが、胃の粘膜を保護するバリアーまでもが失われてしまうのです。(これが典型的な薬の作用と副作用です)
そもそも、薬は成分をギュット濃縮してあるので、それだけでも胃腸を刺激してしまいます。抗生物質などどんな薬でも起こりえます。

妊娠

妊娠したことにより、吐き気や嘔吐の症状が出る場合があります。いわゆる「つわり」の症状です。
妊活中などで心当たりのある方は妊娠検査薬の使用もしくは産婦人科を受診しましょう。もし妊娠している場合には、歯科治療でもさけたほうがよい治療もあります。まずは妊娠していないかどうかを判断する方がよいでしょう。市販の妊娠検査薬も90%以上の信頼性があります。妊娠すると、hCG(human Chorionic Gonadotropin: ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)という名前のホルモンが、胎盤でつくられ始めます。このhCGは着床してから初めて体の中でつくられ、妊娠4週目頃から尿の中にも出てきます。これを検査するのです。

喫煙

「タバコ=毒」 肺がんのリスクは30倍といわれています。当然、口腔も胃腸の粘膜も荒らします。ニコチンによる直接的な吐き気も起こします。毒ですから当然です。禁煙しましょ (^_^)

歯科治療にともなう吐き気(えずきやすさ)

 歯科は恐怖です。過去の経験から一度でも歯科治療での嘔吐反射を経験してしまうと『えずくのが怖い』『治療が上手くできなくて迷惑をかけるのではないか』『えずきが強く恥ずかしい』などと考えてしまい、よけいに反射が出やすくなってしまうのです。 ストレスによる心因性の嘔気(吐き気)がでやすいのも歯科治療が憂鬱(ゆううつ)な理由でしょう。

くわしくはこちら ストレスと吐き気

気楽に近くの歯医者で相談して下さい

 歯にかぶせ物をする治療を補綴(ほてつ)といいます。口の中に粘土(のような印象材といいますが)をいれて取った型に石膏を流して模型を作り補綴物を製作します。ただこの型どりの時に「おえっと」なって歯医者さんを苦手に思う方はとても多いです。型どりがどうしても苦手な場合は、プラスチックで直接かぶせ物を作り装着するなど(強度や持ちの点でかなり劣りますがやむをえません)次善の策を考えます。患者さんと一緒に一番良い方法をわれわれ歯科医師は常に考えています。浅草の歯医者さんなら当院でなくてもどこでも大丈夫です。まずは近くの歯科医院で相談してみて下さい。
 この後、個別の対応法などを考えていきます。

歯の治療で起こる問題点

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器具が入ったり、口に水がたまっただけで気持ち悪い。
吸引器具(バキューム)が入るとオエッとなる。
型をとるときにとても苦しい。
レントゲンのフィルムを入れると吐き気がする。
など、歯の治療を受けるのがいやになってしまうのも当然でしょう。

ご自身て気をつけていただくこと

歯医者に伝えること


「私、おえっとなりやすいんです」 なるべく歯医者側からも、うかがうようにしているのですが、初診の方は特にアレルギーの有無とかいろいろおうかがいすることが多いので、必要な情報をおっしゃっていただくと助かります。

暴飲暴食をひかえる

治療前日はアルコールをひかえ、胃腸がもたれるようなしつこい食事をさける。
当日も胃を荒らすような、コーヒーなどの刺激物は避ける。
満腹(食直後)や逆に過度の空腹状態の時間の治療をさける。
寝不足や体調不良の状態での治療をさける

生活習慣の改善

 肥満があると、頬やノド周りに脂肪がたまります。咽頭部がこれにより圧迫されて、狭くなります。肥満の方は筋肉量も減りやすく、ぐっとこらえる力が低下します。
 タバコは論外です。ノドや食道が荒れるので、嘔吐反射のきわめて強い原因です。
 ストレス体質も大きな原因です。つい先日、高尾山にハイキングにいってきましたが、これも立派なストレス対策の一つです。身体を楽しく動かさないことは、すべてにわたり体調健康を悪化させます。(この原稿を書いたらプールに泳ぎにいく予定です。)

治療中の対応

 呼吸は口ですると乱れやすいです。なるべくゆっくり、みだれないようにして下さい
 治療以外のことを考える。(・´з`・)ぷぅー  むりか
 腹筋(お腹)に力をいれる。みぞおちを強くおす。
 深呼吸をする

歯医者で対応すること

なるべく、楽に治療を受けてもらいたい、それがどこの歯医者も思っていることです。

なるべく寝かせない

 歯の治療は、水平位で行うことがおおいです。口の中にライト(あかり)がはいりやすい、治療の術野がとりやすい、など必要なことなのですが、なるべく、横にしない状態で治療します。

早く・小さく

 型どり(印象といいます)のとき、材料の温度を上げると、早く固まります(その分変形しやすいのですが)。歯をけずる道具(タービン)を小さい物を使う。
 写真のフィルムを小児用を使う(小児用の方が大人用より小さいです)
 また、型どりしなくてよいように、直接充填する材料を使用する。
 治療を長時間連続せずに、小刻みに短い時間できりあげる

口腔内を表面麻酔する

 スプレー式のシュっと振りかける麻酔薬があります。治療前に行うことによって、口やノドの感覚を鈍化させます。

鎮静法

 嘔吐反射が強いのは、歯の治療に対し、不安が強いのが大きいので、精神的に鎮静させる方法ももちいられることがあります。
 抗不安薬を手術や麻酔の前に服用してもらったり、吸入で鎮静をはかる笑気吸入鎮静法もあります。
 腕の血管から静脈内に鎮静剤を点滴で入れて半分寝た状態で行う方法もあります。
 全身麻酔で意識を消失させて行う方法です。ただし呼吸なども抑制されてしまうので高度な全身管理が必要になります。一般開業医では行えず、歯科大学病院などに入院で行う場合がほとんどです。

歯ブラシなどでも「おえっ」となる

 上記でお話ししたように、タバコ・胃腸の病気・過度の飲酒などが大きな因子になります。内臓が弱っている場合は吐き気がおこりやすく、肝臓障害でもおこります。
 嘔吐反射にくわえて、尿や便の状態がおかしい、体調が普段と違うなど、身体の不調のサインをみのがさないことが大切です。
 ストレスも大きな原因になります。

歯磨き粉を変えてみる

 味やニオイ、刺激の強さに合わずにおこすこともあります。(ちなみに私はブリ大根がにがてです。魚臭さが鼻についてダメです。このように苦手な味があります。)
 また歯磨き粉(ペースト)を使わなければいけないというのは、潜入観念です。べつに無理して使わなくてもかまいません。歯の着色はやや起こりやすくなりますが、歯磨き粉なしの歯みがきでも、充分きれいになります。

半夏厚朴湯

はんはんげこうぼくとうとよみます。ツムラの漢方薬ですが、ノドのつかえ、吐き気をおさえ、気分を鎮静させます。胃腸に負担がかかりやすい欠点もありますが、気分がふさいで、咽頭・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う「不安神経症・神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、のどのつかえ感」に効果・効能があるとされます。

ツボを押す

 首の少し下、左右の鎖骨の間のくぼみが「天突(てんとつ)」というツボです。これは嘔吐反射をとめる、ノドの痛みに効くツボとしてしられています。
窪みに指を当て、ノドはデリケートですから、そっと、ほんとにそっとゆっくり3秒ほど押します。3秒はなしてもう一度またそっと3秒押す。

妊娠、つわりによるもの

つわりで歯みがきをするのがつらいなら、いっそ歯みがきをしなくても? と考えたくなるのもわかります。でも妊娠中は、ホルモンバランスなどの関係で、歯周病や虫歯になりやすいので、歯みがきしないわけにはいきません。唾液の性質が変化し粘性が高まってしまい、唾液の洗浄効果が低下したり、口腔内環境が酸性になりやすく、歯の再石灰化の働きが弱まってしまうのです。
 食後にみがかなければいけないというわけではありません。 体調の良い時をみきわめて行ってくだされば充分です。気持ちがリラックスできるお風呂の中でもお勧めです。
 歯磨き粉を変えてみる。意外と子供用の歯磨き粉だと平気という方も多いです。いっそ歯磨き粉なしでもかまいません。
 歯ブラシをかえてみる。子供用の歯ブラシはヘッドが小さく柄も短いので良いかもしれません。
 歯ブラシが口の奥に行くとオエッとなりやすいので、奥から手前に引くようにするとよいでしょう。
大きく歯ブラシを動かすと、嘔吐反射おこしやすいので、小さく動かすのもコツです。
 上をむくと、嘔吐反射しやすいです。少し顔を下にむけながら磨くと良いでしょう。

ちょっとの勇気を

 すいません。話が際限なくひろがってしまいました。虫歯をなおすだけが歯医者の仕事ではありません。口腔管理を通して、全身の健康を維持していただく。私はまだまだ勉強不足の未熟者ですが、浅草の歯医者さんは、どこへいっても詳しく助言し対応してくれます。浅草の歯医者さんだけでなく、全国どこの歯医者さんでも大丈夫です。歯医者を怖がって、放置すればますます悪くなります。ちょっとの勇気をもって近くの歯医者さんにまず電話してみて下さい。

おえっと(えずきやすい)嘔吐反射は歯周病の原因です

 逆に、嘔吐反射の強い方は、歯周病が悪化しやすいので注意が必要です。えずきやすいと歯を食いしばりやすくなるのが原因です。

食道の保護に一役買っているのが唾液です

 乾いたビスケットを、唾液なしで飲み込むのは不可能です。パンなどの食べ物を、唾液と混ぜてペースト状にしてから飲み込みます。唾液はとても働き者で色々な仕事をしています。

唾液の役割
口腔内の食べカスを洗い流し、殺菌力もあり、口腔内を衛生的に保つ
乾燥に弱い口腔粘膜や歯を湿らせ、保護する
舌や頬の動きをスムーズにして会話や食事をしやすくする
食物に水分を与え、咬みやすく、飲み込みやすくする
食物の味覚を感じやすくする
食道を守る

食道を守るのも唾液の機能の一つです

 胃酸が、逆流して食道炎を起こすのが、逆流性食道炎です。本来食道は、尿道と同じように普段は閉じています。食べ物が口から胃に運ばれる時だけ開くのですが、下部食道括約筋の力が弱まってしまうと、胃酸の逆流で食道が荒れてしまいます。食道は苦しいので、脳に助けを求めます。助けを求められた脳は、唾液腺に対して分泌力を高めるように指令します。
 唾液にはムチンというネバネバした成分が含まれています。この粘液を食道に流し込むことにより、胃酸から食道粘膜を保護するのです。また、
 唾液はもともとムシ歯菌の出す酸から、歯を守る為にとても強力な酸の中和力(緩衝能といいます)を持っています。この酸を中和する力で、食道に着いた酸を中和してもくれます。

飲み込むことが歯の負担になります

 ただ、唾液を食道に送り込むためには、飲み込まなければなりません。ご自分で試していただければすぐにわかりますが、口を開いた状態で飲み込むことは苦しいです。飲み込む時には、気道に水分や食べ物が入りこまないように、口を閉じ(上下の歯を噛み合せて)気道を閉鎖する必要があります。
この時に、上下の歯に力がかかります。就寝中でも口腔を乾燥から守るため少しづつ唾液が分泌されています。正常な状態であれば、これにより分泌された唾液を呑み込むのは、一時間に2~3回程度です。逆流性食道炎の傾向のある場合、唾液の飲み込み回数が増加してしまうのです。起きている時と違い、横になっているわけですから、ちょうどペットボトルを横においているようなもので、逆流しやすいのです。

誤嚥性肺炎も関係しています

 一時は日本人の死因のワースト3まで上がった肺炎ですが、幸いなことに少し減少しています。肺炎球菌ワクチンの接種率の向上と、誤嚥性肺炎に対する理解が深まったおかげと考えられます。
 誤嚥性肺炎はわかりやすく説明するためによく「食べ物が間違って肺に入り込み、そこで腐ってしまい肺炎を起こす」と言われます。じつはもう2通りあり、
● 口腔内の細菌などの小さな塊(かたまり)が肺に入って肺炎を起こす
● 一度胃に入った食べ物や胃酸が、食道を逆流して、ノドのところでUターンして、気道にながれこむ
実は後者が一番重篤な肺炎を起こします。
 ノドや口腔の機能が低下した方に対し、われわれ歯科医は口腔機能低下症という病名をつけ、治療や予防処置をしています。
口腔機能低下症について くわしくはこちら
逆流性食道炎と歯周病について 詳しくはこちら
 口腔機能低下症がさらに悪化して、摂食嚥下機能障害となると誤嚥性肺炎のリスクが高まるのですが、通常は「のどががんばることで逆流してきた胃の内容物が気管の方へ流れ込むことはありません」
ただこののどのがんばりが、歯周病の原因になります。

のどの頑張りが歯に負担をかけます

 食道から気道(肺)への逆流を防ごうとするために、ノドの筋肉は緊張し力が入ります。これに連動して首や顎の筋肉も緊張します。
 おえっとなるのをがまんするために、食いしばるのです。食事で上下の歯がぶつかるのは一日20分程度と考えられています。食事で歯が疲労することは考えにくいです。しかしむせやすい方は、毎日長時間上下の歯が接触しています。この長時間の上下の歯の接触が、歯と歯を支えている骨(歯槽骨)の間にある薄い膜状のクッション組織、歯根膜を疲弊させてしまうことがわかっています。これを上下歯牙接触癖(TCH)といい、歯周病菌とともに歯周病の大きな原因です。
 つまり、逆流性食道炎、慢性胃炎など(おえっとなりやすい)病気が、歯周病の原因でもあるのです。
上下歯牙接触癖(スマホ病)について くわしくはこちら

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