厚生労働省の人口動態統計によると、平成26 年の死亡数を死因順位別にみると、第1位は悪性新生物で36 万7943人、第2位は心疾患19万6760人、第3位は肺炎11万9566人、第4位は脳血管疾患で、11万4118人となっています。
主な死因の年次推移をみると、悪性新生物は一貫して増加しており、昭和56 年以降死因順位第1位となっています。平成26年の全死亡者に占める割合は28.9%であり、全死亡者のおよそ3.5 人に1人は悪性新生物で死亡しています。
心疾患は、昭和60年に脳血管疾患にかわり第2位となりその後も死亡数・死亡率ともに増加傾向が続き、平成26年は全死亡者に占める割合は15.5%となっています。
肺炎は昭和55年に不慮の事故にかわって第4位となり、その後も増加傾向が続き、平成23年には脳血管疾患にかわり第3位となり、平成26年の全死亡者に占める割合は9.4%となっています。
脳血管疾患は、昭和45年をピークに減少しはじめ、昭和56年には悪性生物にかわり第2位となり、その後も死亡数・死亡率とも減少傾向が続き、昭和60年には心疾患にかわって第3位、平成23年には肺炎にかわり第4位なり、平成26年の全死亡者に占める割合は9.0%となっています。
誤嚥性肺炎
飲み込む機能が低下した状態である摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)があると、食べカスや細菌が、肺に入り込み肺炎をおこす危険性が増大します。肺炎の原因は、肺炎球菌、インフルエンザだけではありません。
口腔内細菌は毒性は低いのですが
口腔内細菌は実はそれほど強くありません。コレラとかチフスは数日で人間を殺すことができます。でも歯周病菌は歯をダメにするのに何十年もかかります。強毒性ではないのです。ですから身体が健康であれば、口腔内にとどまって他の臓器を一気に障害するほどの力はありません。
ただ、高齢など全身免疫力が弱くなると、肺炎の原因菌としてのリスク(危険性)が増大します。
ノドの機能が低下します
ノドの機能は実は、かなり高度です。空気は気道から肺へ、食べ物は食道から胃へと、実に見事に分離して運んでくれます。普段は空気を通す気道を解放していて、食べ物を飲み込む時だけ、気道を封鎖して、食道を開けるのです。
高齢になると、気道の締まりが悪くなり、食べ物や唾液が、気道に落ち込みやすくなります。
日和見菌が兇暴になります
普段は、病気を起こさないバイ菌も、べつに温和なわけではありません。人間(宿主)の抵抗力が強いので、悪さを出来ないだけなのです。身体の抵抗力が低下すれば、ここぞとばかり病気をおこします。
ガンや高齢などで免疫力が低下すると危険性が高まるのです。
誤嚥
ごえんとよみます。むせると言ってもよいですが、若い人はむせることによって異物(食べカス)を気道から口におしもどせます。高齢になると、むせる力も弱くなり、肺にカスが落ち込みやすくなります。
誤嚥性肺炎
このとき、口腔内の細菌の数が多かったり、質が悪い細菌が多かったりするとより一層危険です。口腔内細菌が原因となって肺炎をおこすのです。若く抵抗力のある人ならば、静養すれば回復します。でも御高齢の方はそのままおなくなりになってしまうことも多いのです。
「どうせ、いつかは死ぬんだから」は誤りです
肺炎起こしても、すぐ死ねません。当院の患者さんでも実はとても多いのですが、10回以上肺炎を繰り返している人もいます。苦しい思いをして回復して、また肺炎を起こしてという方が実はほとんどです。
口腔(こうくう)をきれいに管理することは、肺炎を予防するためにもとても大切です。
当歯科医院のある台東区浅草地区でも、肺炎は非常に増加傾向にあります。
サイレントアスピレーション 不顕性誤嚥
むせることなく誤嚥してしまう事を不顕性誤嚥(ふけんせいごえん サイレントアスピレーション)といいます。食べ物や飲み物が誤って、気管に入ると、「むせ」反射が起こるのが正常です。むせたり、咳込んだりして異物を外に出そうとする体の防衛反応が自然にでます。
しかし、脳梗塞、認知症のある方は、食物が気管に入り込んでも、脳が異常を認識できずに、そのまま異物が肺に入り込んでしまいます。痰を自力で出せないほど体力の低下している方も、同様の危険性があります。
御家族など周りの人も気付き難いため、肺炎に罹る危険性が高くなります。
「むせ」がおこらないことから、サイレント=静かな誤嚥といわれるのです。
ほんとうに怖いのは「微細誤嚥」です。細菌の大きさは、千分の数ミリ程度です。目に見えるような大きな異物の誤嚥ではなく、米粒よりもっとずっと小さい微細な食物残渣の誤嚥が危険なのです。口腔内を常にきれいに保ち、細菌の繁殖数を減らすことが、とても大切になります。