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10分で理解できる新型コロナウイルス

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そもそもウイルスって何 ?

細菌や人間の細胞は

染色体(生物の設計図つまり遺伝子 DNA )
ミトコンドリア ATP という生きていくために必要なエネルギーを作る
リボソーム 酵素や体の構造体であるタンパク質を作る
小胞体 物質を運ぶ通路(肝臓などは解毒も)
ゴルジ体 タンパク質に糖をつけ加工
リソソーム 細胞にとって有害な物を処理

30兆以上の細胞から構成される人体も、単細胞の細菌も基本的構造は同一です。
発電所があったり、車を作る工場や、鉄道や道路、ごみ焼却炉、お米や野菜を作る農業など個々の働きにより、一つの社会が形成されているのと同じです。
細菌は、水分や栄養があれば、生存していけますし、また自らを複製して増殖することができます。

これに対してウイルスは

EPSON MFP image


遺伝子(DNAかRNA)とそれを包む殻(から)だけで構成されています。

核酸 ゲノム(遺伝情報の総体)として DNA か RNA どちらか一方

DNAは二重らせん構造をしてとても安定的です。
人間はこのDNAからRNA(一本鎖)を作り、たんぱく質を合成すします。
ウイルスは遺伝子がDNAタイプ(天然痘・ヘルペス・B型肝炎など)RNAタイプ(日本脳炎・エボラ出血熱・コロナなど)両方います。RNAは一本鎖で複製時にエラーを起こしやすいので、変異が起こりやすく病原体としてやっかいです。

カプシッド 遺伝子を保護している入れ物(タンパク質の殻)
エンペロープ カプシッドの外側の脂質からなる膜

エンベロープを持つウイルスと持たないウイルスがいます。持っているウイルスのほうが、感受性細胞に付着しやすくなる半面、油膜なのでアルコールやせっけんなど脂質を溶解する消毒薬が効果的です(コロナは持つタイプ)。

大きさは

人間の細胞 0.02mm(平均)
細菌 数百分の1ミリ

コロナウイルス 1万分の1ミリ

遺伝子の量は

人は23対46本の染色体があり、含まれる塩基対は31億です。
これに対してコロナウイルスの塩基数は3万程度です。

ウイルスは細胞に寄生しないと増殖できません

ウイルスは、遺伝子という設計図しか持っていないので、単独で増殖することはできません。細胞の中に寄生させて、自分の複製を大量にコピーさせるのです。
寄生された細胞は、正常の活動ができなくなったり、死滅してしまうので病気になるのです。


寄生できる動物や臓器は限られます

どんな動植物へも、寄生可能なスーパーウイルスはいません。どの動物に寄生できるか、そしてどの臓器ならとりつく事ができるか、ウイルスの能力は意外に限定的です。植物に寄生するものもいます。たとえばトマトモザイクウイルス。トマトの葉をモザイク状に萎縮させてひどいと枯れてしまいます。ただこの病気にかかったトマトを食べても人間が発病することはありません。しかしトマトモザイクウイルスが他のナス科植物にも感染するように近縁種には感染する場合もあります。

人獣共通感染症

じんじゅうと読みます。ウイルスに限らず細菌でもおこります。狂犬病は、ウイルスを保有するイヌ、ネコ、コウモリ、キツネ、アライグマなどからも感染します。
インフルエンザも渡り鳥から感染します。高病原性鳥インフルエンザウイルスは、、通常人には感染しないと考えられています。しかしこの病気で死亡した野鳥に素手で触ったりすると感染することが考えられます。養鶏場で発見され、全部のにわとりが処分されるのも、ここから人間に広まるのを恐れてのことなのです。

コウモリ

新型コロナウイルスもコウモリが原因との説が濃厚です。コウモリを原因とする病気は多く

狂犬病 アメリカでは1980~1997年に発生した狂犬病患者の58%はコウモリ由来
SARA重症急性呼吸器症候群 キクガシラコウモリからハクビシンから人間へ
MERS中等呼吸器症候群 ヤマコウモリからヒトコブラクダから?
エボラ出血熱 自然宿主としてオオコウモリの疑いが濃厚

理由として、下記のことが考えられます。
(1) 1100種類(哺乳類では2000種の齧歯目につぎ多い。ちなみに人間は1族1種のみ
(2) 小さいわりに意外と寿命が長い(数年、長いものだと数十年)
(3) 不潔な薄暗い所に集団で生活。」
(4) 口から超音波をだす。この時唾液も一緒に飛び散る。周りの個体にうつる
(5) 移動距離が意外と長い(数十キロは平気で飛ぶ)


コロナの侵入方法

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 ノドなどの粘膜の細胞の表面にある「ACE2受容体」に、ウイルスの表面の突起であるスパイクタンパク質が結合することから侵入が始まります。ボールペンやマジックのキャップは本体とピッタリ合うのの同じです。そしてここを足掛かりにして、人間の粘膜細胞の膜とコロナの外膜が融合し合体します。大きな氷の塊に小さな氷を乗せるとくっいてしまう感じです。

ACE2とは

Angiotensin converting enzyme 2(アンジオテンシン変換酵素2)の頭文字です。エース2と読みます。ACEHとも呼ばれ血圧の調節に関係している酵素です。
血圧が下がると、脳などに十分血液を送れなくなるので、RAAS系(腎臓や副腎が関係)により血中のACE2を増加させ血圧を上げようとします。このACE2の情報を受け取る受容体(レセプター)が全身の細胞表面に存在しますが、そのレセプター(ACE2受容体)からコロナウイルスが侵入を試みるのです。

ACE2受容体の多い臓器

ACE2受容体は、肺胞、腸、腎臓、血管の内皮細胞など多いのですが、感染源として
 気道上皮は高危険度ですが、鼻粘膜・気管の細胞からはACE2の検出は低く意外なことに低危険度です。注意するべきことに
口腔粘膜、特に舌に多く存在することが明らかになっており口腔からのつば(唾液)を介した感染が意外と多いのではないかと考えられています。

歯周病もコロナ感染の重要因子

プロテアーゼ

 
コロナウイルスは、ACE2受容体に結合した後、プロテアーゼ という酵素で活性化される細胞内に侵入しようとします。歯周病菌は住処を作るために、歯と歯ぐきの間を溶かしてスキマを作っていきます。これが歯周ポケットですが、ポケット形成のために大量のプロテアーゼを生成しています。コロナウイルスは歯周病菌の出すプロテアーゼを上手に利用しています。

ACE2受容体を増加させる

ACE2受容体は、炎症が起こった際に、細胞を保護する働きもあるので、炎症があると増加します。つまり、歯周病菌によって歯周ポケットが形成され、歯周炎があると歯周組織にもACE2受容体が増加することになり、感染のリスクを高めます。


歯周病菌は

ACE2受容体を増加
プロテアーゼ (タンパク分解酵素)

によって新型コロナウイルスにとって力強い味方になってしまうのです。

おしゃべりは意外と危険かも

3密(さんみつ)とは!?
・密閉…換気が悪い場所
・密集…人が集まって過ごすような場所,または空間
・密接…不特定多数の人が接触する可能性の高い場所



 これまでに流行が広がったクラスターも、ビュッフェ、ライブハウス、屋形船などは人が食事をしたり大声でしゃべったりする場所が多いです。
感染者と共通の食事を食べることで唾液によって舌から感染することがあるかもしれません。(唾液、舌を介した感染についてはまだ証明されていません。もしかしたらの仮説段階です)

コロナウイルスによる嗅覚味覚障害

阪神の藤浪晋太郎投手がワインやコーヒーのにおいを感じない嗅覚異常を訴え、PCR検査で陽性が出たり、ドイツでは、約3分の2の患者が数日間の嗅覚障害と味覚障害を訴えていたことが明らかになっています。被害が深刻なイタリアでは発熱や倦怠感、咳などの症状が現れていない若者らの間で、味覚障害や嗅覚障害を訴えるという報告が相次いでいます。コロナだけでなくインフルエンザなどでも起こることから

  1. 亜鉛不足(栄養バランス)の悪さ
  2. ストレス
  3. ウイルスによる味覚や嗅覚細胞の破損

等も考えられます。ただ前記のように、「舌」はコロナウイルスの侵入経路であるACE受容体が多いことから、舌がコロナウイルスに強く侵されていることも示唆されます。ただコロナからの回復に伴い、味覚嗅覚とも回復するので過度の心配はいらないようです。

無症状ウイルス保有者からもうつる

不顕性感染とは、

細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず,感染症状を発症していない状態です。無症状病原体保有者ともいいます。ダイヤモンド・プリンセス号のデータでは、新型コロナウイルス感染者の17.9%は無症状でした。

ウィルスが体内に入り感染
      ↓
体内で免疫機能とウィルスが戦争
      ↓
ウイルスは多いが、免疫力が勝る

身体は病原体と戦うために、体温を上げたり(免疫力UP)だるさ(体の消耗をさける)せき(タン((バイ菌やウイルス)を体外に排除)しますが、そこまでしなくても余裕でウイルスと戦える人は症状でません。(逆に免疫力がなさすぎてなすすべが無い場合もあります)
インフルエンザなどでは不顕性感染者が感染源となる場合は極まれなのですが、コロナは症状のない保菌者(正確には保ウイルス者)からも感染します。
症状のある人と無症状の人、どちらが感染力が強いのか?という疑問に対して、中国では「どちらも大差がない」という調査結果が発表されています。
無症状感染者の場合は、自覚症状がないため知らぬ間に感染拡大させてしまう恐れがあります。健康そうな知り合いからもうつされてしまうのです。濃厚接触に注意しましょう

濃厚接触に注意する

至近距離で会話する
一緒に食事をする
感染者と衣食住を共にする

意外と汚れているもの

スーパーやコンピニのかご
お財布・スマホ・クレジットカード
缶コーヒー・ペットボトル

 自分の持ち物だとつい安心してしまいます。
でもクレジットカードなどお店の人も触ります。


体はどうやってコロナと戦うの?

「粘膜免疫」第一段階の防御

人間が一日に吸い込む空気の量は1万5千リットル(500ccのペットボトルで3万本)です。ウイルスや細菌、花粉などが混じっています。これらの異物を侵入させないように守っているの防衛の第一段階が「粘膜免疫」です。口の中は唾液(つば)でベタベタです。この粘液に異物をからめとり、繊毛運動で排出します。

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IgA

警官が犯人にかける手錠みたいなものです。免疫グロブリン(immunoglobulin)と呼ばれ、「Ig(アイジー)」と略されます。 AからEまで5タイプあります。
消化管や呼吸器における免疫機構の最前線で働きます。粘膜はAタイプで、IgAと略されます。他のタイプより、特異性が低く、さまざまな種類の病原体をからめとります。

刺股

“さすまた”と読みます。刺股とは相手の動きを封じ込める 武具 及び 捕具です。U字形の金具に2-3メートルの柄がついており、金具の部分で相手の首や腕などを壁や地面に押しつけて捕らえます。また先端金具の両端には折り返し部分が付いており、これを対象者の衣服の袖等に絡めて引き倒す際にも利用されます。免疫グロブリンはこんな感じでウイルスなどの異物の動きを封じこめます。

IgAが低下すると病気にかかりやすくなります

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激しい運動 フルマラソン後は風邪にかかる率が6倍
強いストレス 自律神経のバランスが乱れます
胃腸の不調 免疫の中枢は腸のパイエル板
睡眠不足 睡眠時間が7時間を切ると3倍風邪にひきやすい
不規則な生活 体内時計が乱れる
栄養バランス 材料がなければ作れません
たばこ 血行不良など、そもそも猛毒です
飲酒 肝臓に負担をかけます。少量に


非特異性防御

残念ながらウイルスが粘膜の上皮細胞に侵入してしまいました。この後に述べるTc細胞による免疫反応が重要になるのですが、準備に数日間かかります。そこでいち早く一次防御(自然抵抗)がはじまります。

マクロファージ 異物はなんでも食べようとするのでウイルスも貪食します
NK(ナチュラルキラー)細胞 ウイルス感染しておかしくなった身体の細胞を破壊

両者ともコロナウイルスだけをターゲットにしている訳ではないので、限界があります。主役のTc細胞が遅いので前座が頑張ります。

遅延型反応

ウイルス防御の主役=キラーT細胞

細胞傷害性T細胞(さいぼうしょうがいせいTさいぼう、cytotoxic T lymphocyte)という白血球の一種です。Tcと略されます。キラーT細胞とよばれます。
ちょっとむずかしくなりますが、なるべく優しく説明しますので、がんばってついてきてください。(^_^)

抗原提示

コロナウイルスに侵された細胞は最後の力を振り絞って、ウイルスの特徴を細胞の表面に提示します。

Tc細胞が感染細胞を破壊

コロナウイルスに感染された細胞の出す目印を目標に、Tc細胞は感染した細胞を、コロナともども殺します。自分の身体の細胞を殺すのですから可哀想な気がしますが、自らの細胞を殺すという犠牲のもとウイルスを駆逐するのです。

なぜ遅延なの

 はじめから活動すれば風邪や肺炎が長引かずにすむのですが、すべてのTc細胞が新型コロナ感染細胞を殺せるわけではありません。新型コロナウイルスの特徴(抗原といいます)に特異的に反応するTc細胞のみが破壊のライセンスを持ちます。
 過去に何回もそのウイルスに感染している経験があれば、体の中にはそのウイルスに対する特異的なTc細胞がすでに多く存在します。
毎日のようにいろいろな細菌・ウイルスにさらされて生きています。それら一つ一つは形が異なるため、すべての病原体に対応するために、身体は無数の種類のTc細胞を用意しています。種類が多い分、個数は限りなく少ないです。新型コロナに対応できるTc細胞も元から体にいるのですが、細胞数を増産するのに時間がかかるのです。

本当に無数に用意できるの?

 基本的に、同一人物であれば、どこの細胞をみても同じ遺伝子(DNA)をもっています。
Tc細胞も同様で、生まれたての時にはすべて同じDNAをもっています。当然、そのままではすべてのTc細胞がまったく同じです。それでは、1種類の病気にしか反応できませんから、体の防御機構としては成り立ちません。組み換えて変化させることができる可変領域が存在しその部分が変化していると考えられています。


サイトカインストーム

そもそもサイトカインとは

免疫細胞を制御する物質の総称です。様々な細胞から作られ、そして様々な免疫細胞の働きを誘導します。1種類ではなく多種あります。

主な産生細胞 主な働き
IL-1 マクロファージ 内因性発熱物質
すべての炎症細胞を活性化
IL-2 ヘルパーT細胞1(Th1) キラーT細胞分化・活性化
ナチュラルキラー細胞(NK)活性化
マクロファージ活性
IL-6 マクロファージ
ヘルパーT細胞2(Th2)
キラーT細胞活性化
INF-γ ヘルパーT細胞1(Th1)
ナチュラルキラー細胞キラーT細胞
マクロファージ活性化の主役
Th1の分化・増殖
TNF-α マクロファージ
マスト細胞
マクロファージ・Th1活性化
腫瘍細胞障害

INFはインターフェロン(Interferon )の略
TNFは腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor)の略

Th1・Th2

サイトカインを産生し放出する主役の細胞がヘルパーT細胞です。
ヘルパーというと「お手伝いさん」というイメージがありますが、免疫を調整する司令塔です。白血球の中でも最上位のエリートです。
● ヘルパーT1(Th1) キラーT細胞を活性化
● ヘルパーT2(Th2) 抗体産生を促進
一言でいうとこんなところでしょうか。
もともとナイーブT細胞というリンパ球の一種から分化した兄弟のような細胞同士ですが、とても仲が悪いです。バランスを崩すとアレルギーなどを引き起こす原因になります。

サイトカイン・ストーム

過剰免疫反応と漢字にすればすぐ理解できますよね。
通常の免疫反応であれば、ウイルスに打ち勝って、ウイルスが減少していけば、発熱を促進するインターロイキン(IL-6)やウイルスの増殖の抑制を促すインターフェロン(INF)も減少していきます。ところが、こういった炎症促進物質が過剰に作られると困ったことになります。
IL-6が過剰増加すると、急性炎症反応を引き起こします。肺でこれがおこると、肺胞の内側に水分や白血球そのものや白血球の死骸などが溜まります。肺はブドウのような小さな空気を入れる袋で酸素を血液に供給していますが、炎症部位ではガス交換が出来なくなり、酸素をとりこめなくなります。これが「肺炎」です。ウイルスによる直接的な肺の破壊より何千倍も強い炎症が肺で起こってしまいます。
若年層ほど免疫が活発化しやすいので、過剰反応を引き起こしやすいといわれています。

もうちょいつづきますが、また5月16日ごろ書き足します。忙しくて進みが遅くてすいません。

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