キシリトールとは
キシリトールは、 C5H12O5 という化学式で表される糖アルコールの一種です。アルコールといってもお酒とは違い、糖に水素が2つくっついたものです。イチゴ,カリフラワー,ホウレンソウ,タマネギなどの野菜や果物に含まれた天然素材の甘味料で、体内でもつくられます。工業的には、白樺や樫の木・とうもろこしの芯などを原料として作られたます。
なぜ虫歯の予防効果があるの?
口腔内細菌が酸を作りません
口の中に砂糖が入ると、歯にへばりついた細菌がこれを食べて酸をたくさん出します。でも、キシリトールは口腔内細菌が利用できないので、酸が発生することがありません。また、他の虫歯が起こらないとされる甘味料は、続けて食べているといつの間にか口腔内の細菌が利用できるようになってしまうのですが(口腔内細菌の順応性)、キシリトールではこれが起こらず10年以上の長期にわたって撮り続けても利用できるバイ菌が出現しないのです。
歯質の再石灰化の促進
キシリトールに限ったことではないのですが、唾液の分泌を促進し、唾液に含まれるカルシウムが、微細に壊された歯の表面を修復する(再石灰化)と考えられています。さらに糖アルコール分子のOH基が唾液やプラークのカルシウムと複合体を作り、水溶性のカルシウム量を増やし、このカルシウムがエナメル質表面の再石灰化を促すものと考えられています。
キシリトールの無益回路
酸を強く発生する口腔内細菌としてストレプトコッカス・ミュータンス菌がいます。この菌は、キシリトールをエネルギーとして利用できないのに、菌体内にキシリトールを取り入れます。キシリトール5リン酸という物質に変換するのですが、利用できないのでまたキシリトールに戻し、菌体外に排出します。利用できない物質を入れたり出したりするのでバイ菌はくたびれ弱っていきます。これを空転回路と呼んでいますが、ミュータンス菌の力が弱るので、口腔内にとっては大助かりです。
このようなことから、歯医者の団体である日本歯科医師協会は、毎食後1日3回3ヶ月以上キシリトールガムやタブレットを摂取することで、虫歯の予防や進行を防ぐのに効果的として推奨しています。
キシリトールの安全性は?
アメリカの食品衛生安全局は、人体に悪影響がでないために人工甘味料の1日の摂取量を制限している機関ですが、キシリトールに関しては安全性が高いと判断し制限をおこなっていません。キシリトールは全世界でも認知度が高く、WHO(国際保健機関)も安全であると評価をしているところから安心感を得て、他の人工甘味料に比べて比較的愛用されています。FAO(国連食糧農業機関)も認可を出していますし、厚生労働省も1997年に食品添加物として認可しています。その10年以上前から糖尿病患者さんの点滴の輸液成分として使用されるなど、キシリトールは人体に安全なものとして知られていました。
キシリトールの副作用
下痢
キシリトールなどの糖アルコールは小腸で消化・吸収されにくいという特徴があります。糖アルコールは水分を吸いやすい特性があるために腸管壁から水分を引き出し、大腸の中の水分が増えるため下痢をしやすくなると考えられています。
個人差が多いので一応の目安ですが、1日に30gほど摂取したらお腹を下しやすくなるといわれています。ガムだと1日15個の計算になります。
犬にキシリトールはNG!
犬の場合、吸収されたキシリトールは体内でのインシュリンの分泌を強力に促進させる働きをします。インシュリンはご存知のとおり血糖値を下げるホルモンですから、犬にキシリトールを与えると重度の低血糖をおこします。また長期にわたると肝臓障害をおこします。人間は犬と違い血糖値の低下は起こらないと考えられています。
キシリトールは虫歯予防効果は無いとの説もあります
コクラン共同計画(Cochrane Collaboration、略称CC)は、治療と予防に関する医療情報を定期的に吟味し人々に伝えるために、1992年にイギリスの国民保健サービス (NHS) による評価の一環として始まったものですが、発表によると、調査対象となったのは1991~2014年の間に出された、キシリトールの虫歯予防効果に関する10件の研究論文ですが、ほとんどすべての研究結果のの虫歯予防効果に明確なエビデンス(根拠となる研究結果)がないという指摘が下されました。
たとえば4000人の子供を3年間調査した2つの研究で、10%キシリトールを配合した歯みがきと配合なしの歯みがきと比較したところ、虫歯が13%減少したとのことです。ただしこれらの2研究は、同じ著者が同じ被験者を対象に行なっており、偏りが大きく質の低いものとされました。
私見ですが、私もキシリトール反対です
うちの子供にもキシリトールは与えていません。なぜなら美味しくないからです。キシリトールもできるだけ長い時間口腔内に留まっていることが望ましいので、キシリトールガムやキシリトールキャンディーが推奨されます。
キシリトールは溶けるときに熱を奪うので、スーッと冷たい甘みです。砂糖の暖かい甘みとは質の違う甘みです。味覚の完成した大人が、ダイエットなどのために使うのならば良いのですが、味覚の形成が充分でない子供に与えるのはいいかがなものかと思います。
グラニュー糖と和三盆の違い識別できますか
私の趣味の一つにジャム作りがありますが、使う砂糖はグラニュー糖です。梅酒づくりでは氷砂糖。素材の味をできるだけ邪魔しないことが大切なので純粋な砂糖を使うのです。
徳島県や香川県で作られている和三盆は、甘さがくどくなく後味がよいため、和菓子の高級材料として使用されてますが、いまやヨーロッパにも輸出されています。
このような繊細な味覚を持っているのが日本人です。小さい頃からキシリトールを味わって、このような感覚が作られるとは思いません。
ほとんどの歯医者さんは、歯の事を当然考えますから、キシリトールのアメやガムを推奨します。歯科医師会でも当然推奨しています。
でも田中歯科医院では、キシリトールは上記のような理由から推奨していません。他の方法で充分虫歯予防ができると考えています。