摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害とは
食べ物が、食道を通って胃にはこばれる。ごく自然なことのように思われますが、実はかなり高度な機能なのです。食べ物を飲み込む時には、気道の入り口がしっかり封鎖されていなければいけません。封鎖のタイミングがずれたり、すきまがあったりすると、気管や肺に食べ物や液体が入ってしまうのです。
飲み込む機能が低下した状態を摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)といいます。
原因は
脳内出血、脳梗塞、アルツハイマー、認知症、加齢などによる、脳の摂食嚥下中枢の機能低下が原因となります。またノド(喉頭咽頭部)の筋肉の機能低下や、唾液の分泌低下なども関係しています。
食べ物を飲み込むためには
口の中に食べ物を入れる。
口の中に取り込んだ食べ物を、噛んで、唾液と混ぜて飲み込みやすくする(食塊(しょっかい)形成)
口から喉の奥のほうへ食べ物を送り込む。(舌で食塊を上顎の口蓋にすり潰すように押しつぶす)
呼吸のために開いていた気道の入り口を閉鎖する。
食道の入り口を開く。
食べ物を食道に送り込む。
食道を閉鎖し、気道の入り口を開く。
ふー けっこう大変でしょ
よく見られる症状は
口の中に上手に食べ物を運べない(箸が使えずスプーンになるなど)
食べこぼしが多くなる。よだれを多く垂らす(流唾)。
飲み込まず、いつまでももぐもぐ口の中に食べ物がある。
食後、口の中に大きな食塊(食べ物のかたまり)が残っている。
よくむせる。
食事の時間が極端に遅くなる。
唾液の分泌が悪くなり、口の中が乾いている。
口腔(歯)の機能は、ジューサーミキサーと同じです。
食べ物を粉砕することです。フタを開けたまま、ジューサーを回したらどうなりますか? ジューサーに入れた果物が、外にぶちまけられてしまいますよね。
口も同じです。入り口(上唇と下唇の間)からこぼれるということは、口唇の周りの筋肉(口輪筋)の力が弱っていたり、脳の機能低下があるということです。
食べ物は、出口(のど⇒食道)へと動いていきますので、こちらの機能も同じように低下していると考えるのが自然です。
食べこぼしが多いということは、飲み込む機能も低下しているのです。つまり誤嚥しやすい(摂食機能障害)のです。
どのような危険があるのでしょうか
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
口腔内の細菌や食べ物カスが、肺に入り込み肺炎をおこすことがあります。日本人の死因の第3位になりました。抵抗力の弱っている高齢の方には、命をも奪う恐ろしい病気です。
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脱水
飲み込みにくい代表選手は、何と「水」です。ペットボトルやコップを倒すと、中の
液体は、すぐにこぼれます。そうです、水は動きが素早いのです。このため飲み込む準備が出来ていないうちに、勝手に動いてのどにいってしまうのです。
水を飲むと、むせやすい。⇒むせると苦しい。⇒水分の摂取を控える。
しらずしらずのうちに、慢性的な脱水症をおこしやすくなります。血液の粘度が増し心筋梗塞の危険(リスク)因子にもなります。
低栄養
身体の代謝を維持するために必要なカロリーを維持できないために、体重、骨格、筋肉、内臓すべてが、減退していきます。必然的に、免疫力や体力などの生きていく生命力の低下がおこります。生命維持のために経管栄養(経鼻胃管、胃瘻(いろう))、中心静脈栄養法などを考えなければいけない場合もあります。
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