生まれてきたばかりの赤ちゃんは、お母さんのおっぱいが唯一の栄養源です。乳首にしゃぶりつかなければ栄養を取れません。これの延長上にあるのが指しゃぶりです。
ですから、低年齢の時の指しゃぶりは、特に気にすることはありません。ただ、4、5歳から小学生になってからの指しゃぶりは、単なるくせというわけではなく、心理的や発達上の問題が関係することもあり、放置できない場合もあります。
年齢との関係を考えつつ、お話していきたいと思います。
生まれる前から指しゃぶり
超音波を使ってお母さんのお腹の中の胎児の動きを観察すると、3ヶ月を過ぎた頃から手を口に持っていく動作が確認でき、7ヶ月頃になると、自分の指を口の中に入れている様子が観察されます。
これは、生まれてから授乳をする練習をしていると考えられています。
0歳児、1歳児の指しゃぶり
お母さんの乳首にしゃぶりつくのと、同じ動作で生理的なものですので悪い事ではありません。自分の指をしゃぶるのは赤ちゃんにとって気持ちが良いことらしいです。不安を和らげたり、落ち着く効果があります。神経質にならず、いずれ自然にやめるものと考えて大丈夫です。
2歳児、3歳児の指しゃぶり
さびしい時や不安な時、心理的に落ち着きたい時に行ってしまうようです。このため、昼間はしなくても夜寝るときなどに指が口に行ってしまうことがあります。
親指をしゃぶることが多いですが、上の前歯を押し出してしまうことがあります。ただこの年齢の指しゃぶりの場合やめれば元に戻りますので、それほど神経質に心配することはないと思います。ただ、もちろん程度の問題ですので、心配ならば近くの歯医者さんで相談してください。
やめさせようと、叱ったりお父さんやお母さんが神経質になると、かえって逆効果でよりひどくなる場合が多いです。
4歳児,5歳児の指しゃぶり
指しゃぶりの影響がいろいろ出やすくなります。そろそろやめさせたいものです。
指しゃぶりによる歯への影響
歯並び | 上の前歯が出っ歯になります |
噛み合わせ | 上下の前歯に隙間ができ、前歯で食べ物を噛み切れなくなります |
発音 | サ行やタ行が不明瞭になりやすいです |
くちびる | 上下の唇がくっつかなくなります |
原因は
この年齢になると、お母さんお父さんなどの家族だけではなく、友達同士の関係も多様化してきます。自分中心に物事が動かなくなります。人間関係が上手に構築できないのは大人と同じです。自己表現が上手にできなかったり、自分の主張を積極的に言えなかったり、子供は子供なりに多くのストレスを抱えます。
おおらかな気持ちで見守ってください
お子さんの能力を超えた要求を繰り返し求めたり、両親の意見の対立などを見せて、不安に感じさせたり、両親の教育方針が極端に食い違っていたりすると、お子様も混乱します。
スキンシップを大切に考え、お子様に自信を持たせるように、みんなで協力していきたいものです。
もうお兄ちゃんなのに、お姉ちゃんなのに、と過度にプレッシャーをかけたり、叱ったりは逆効果です。
指に刺激物を塗るのが効果的と、推奨する歯科医の先生もいらっしゃいますが、かえって精神的なストレスを大きくするばかりと、田中歯科医院では考えております。
自分でやめたいと思わせることが大切ですので、焦らずに安心感を大切にしてください。
小学生になっても指しゃぶりがおさまらない
歯並びの問題ばかりでなく、言葉がはっきりしないなど発音の問題、自然な飲み込みができなくなるなど、いろいろな影響が出る可能性があります。
ただ指しゃぶりをしている子供がすべて、障害が出るというわけではありません。歯並びなど口腔機能にあまり障害の出ない(悪く言えば上手な)指しゃぶりをしているお子様も多いです。
なぜ指しゃぶりをしてしまうのか
お子様自身
楽しい小学校生活のはずですが、全員が全員、学校という環境に適応できるわけではありません。友人関係を作るのが苦手な子供もいます。自分の行動に自信が持てない、孤独感を感じている事もあります。
家庭環境
ご両親など周りの大人が過保護だったり溺愛しすぎたり、逆に厳しすぎても、お子様のストレスになります。
以前夏の暑い日にうちの歯科医院に、気持ちが悪いのでちょっと休ませてくださいと、小学校低学年くらいの男の子が入ってきました。暑い日だったので軽い熱中症かと心配し、ご両親に連絡を取ろうと電話番号を聞いたのですが、怒られると言って教えてくれませんでした。うちのスタッフが途中まで送っていたのですが、お母さんに怒られてしまうということで家までは送らせてくれませんでした。
指しゃぶりに関しては、指しゃぶりだけをやめさせようとしても全く効果はありません。心や体のバランスの取れた発育を手助けしてあげることが大切です。食事の準備や部屋の掃除など役割を持たせてあげたり、家族そろっての時間を作ってあげるのも大切です。
指しゃぶりは、こどもからのSOSにかもしれません。 気が付いてあげてください。