弱点をさらけだす
骨格で覆われていない腹部やのどは動物にとっての弱点です。家のワンコ(トイプードルのココ)もよくこの体勢をします。飼い主を信頼して、安心しきって、リラックスして「幸せだなぁ」という気持ちなのです。(ただし攻撃的腹見せといって噛み付く直前に取る攻撃態勢のこともあります。念のため)。
ペットの犬のように、歯医者に全幅の信頼をゆだねることはできますか?。初診ならなおさらです。初対面の人を100%信用できるはずがありません。
その歯医者に、自分の一番弱い部分、ノドや胸をさらけ出すのですから、恐怖心があってあたりまえなのです。それも自分は寝かされ、一段上の位置からのぞきこまれるんですから。
頭に近い
脳から直接出る神経を脳神経といいます。視神経や嗅神経などですが、歯など口腔を支配しているのも、脳神経(三叉神経)です。ちなみに手や足の神経は脊髄神経です。
会社でいえば手足が支店に対し、本店です。脳にしてみれば重要性を高く感じるので、あぶないと思うととっさに手で頭を覆うでしょう、頭に近いところほど大切に考えるのです。
その部分をいじくられるので、恐怖がより強いのです。
身体を傷つけられる
本来、人の体を傷つければ、刑法204条に規定されている「人の体を障害」する行為になります。ところが医療行為(医師の専門的判断と技術により治療を目的とする)なので、刑法35条により違法性がないのです。法律を持ち出すまでもなく、常識的に治療目的でやむを得ず、身体に傷をつけられるのです。
理屈では解かっていても、本能的に怖いのです。
食い縛れない
歯を食いしばって頑張れ。とはいいますが、口を開いて頑張れとはだれもいいません。全身の筋肉を強固に素早く動かすためには、咬筋(こうきん)の緊張が必要なのです。口を開くのは、本来リラックス。矛盾した動きを強いられるのでつらいのです。
以前の治療でとても痛かったり、怖い思いをした
小さい頃にに受けた治療でとても怖い思いや痛い思いをしたという体験によることが多いです。白衣やマスクをつけた姿は異様に見えます。無理矢理治療をされたり、耐え難いほどの痛みを体験したことがトラウマになっています。
抜歯などで長時間かかったり、麻酔が良くきかなかったり、治療後に出血が止まらなかったり、その後何日も痛みが続いたりなど、つらい体験をしたことが原因となることもあります。
心無い扱いをうけた
歯科医やスタッフの対応が威圧的と感じたり、雑に扱われたと感じたりした場合、心無い扱いを受けたと思うと、すべての歯科医院が同じだと思ってしまいます。
親が歯医者ぎらい
絶対やってほしくないのは、「そんな悪いことすると注射してもらうからね」と罰則にしてしまうことです。なにもお子さんが悪いことをしたから注射や歯の治療をするのではありません。親御さん自身が子供に対してどう対応したら良いのかわからないのか、怒鳴って叱りつけたり、歯科医院=怖い・痛いというイメージで、子供さんに恐怖心を植え付けてしまっている場合も少なくありません。
自尊心をきずつけられる
「歯がとても悪いので見せるのがはずかしい」結構多くの方がおっしゃる言葉です。歯が悪いのは自分の今までの管理が悪かったから(実際には唾液の質とか歯の強さとか、自己管理意外の部分も大きいのですが)
ここが悪い、ここも良くない。歯みがきも上手にできていない。歯医者さん、あんたに言われなくてもわかっているよ、ということです。自尊心がズタズタです
悪循環でますます歯科恐怖症に
このようなことが重なって、歯科恐怖症になっていきます。
そうなると歯の治療をなるべく早く切り上げたい。長くかかるのはいやだ。痛みが止まったのでもう治った。など自分勝手に歯科治療を切り上げてしまい、さらに悪化してまた痛く、ひどくし、益々治療の難易度が上がり(口を開いている時間も長くなり、回数もかかり、予後不良(治した所が再発しやすい)、ますます歯医者を不審に思い、中断し、ひどくしを繰り返し悪循環に陥るのです。
われわれ歯医者も充分理解しています
初診の方に書いていただく問診表ですが、
歯科治療を受けるのは
□ 非常におそろしい
□ おそろしい
□ 不快
□ 平気
という項目をいれてあります。
治療範囲についても、
応急処置のみ、痛い所のみ、予防処置を含めて
とチェックしてもらいます。
口腔内を見てもわかります
いちご舌
舌の先端が、イチゴのように赤くぷちぷちなっている方がいます。溶連菌感染によるあきらかな病気の場合もあるのですが、不安神経症、不眠症などの精神的疾患でも多く見られます。特に女性では、自律神経失調症、更年期障害でもみられます。(余計なお世話ですが、生活環境の改善やストレスの解消も大切です。趣味を持つ、適度にスポーツをするなどが大切です。また緊張が高まると出やすくなります。
頬や舌に圧痕
頬内面に白く筋がみえたり、舌に歯型がついていることがあります。手首に輪ゴムを巻いていると痕がつくように、頬の筋肉や舌が緊張していることの証拠です。
まあ総合的に観察させていただければわかります
歯医者も人を診させていただくプロですから、総合的に観察していればある程度わかります。怖がっている方には、怖さに対する対応をしているのです。どの歯医者にいけばよいかとても悩む、悩んで悩んでその結果、どこの歯医者にもいけず、時間だけすぎて、悪化させてしまう。こんな方はとても多いです。
国家試験に通らなければ、歯医者になれませんから、基本的な知識や技術はどの歯医者でも充分そなえています。あとは相性の問題です。
相性のよい歯医者を見つけるには
先日、大阪のユニバーサルスタジオに遊びにいってきました。家内と娘といったのですが、帰りにおみやげを買いました。大きいぬいぐるみを2つ買ったのですが、会計のおばさんが、「おじょうちゃん、いいわね、二つも買ってもらって」。実際には、一つは娘の友達の誕生日プレゼント、もうひとつは当診療所の待合室のインテリア用で、実は娘の分は無しです。そんなんで娘はちょっとムッとしてました。東京のディズニーランドでこんな会話は経験ありません。大阪はよく言えば情に厚くフレンドリー、東京は礼儀正しくあくまで丁寧なのです。どちらが良いかは、あなたしだいなのです。
歯医者も同じで、ご自身に合った歯科医院を見つけて下さい。実はそれがむずかしいんですよね