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逆流性食道炎と歯周病

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逆流性食道炎

 食道は、長さ約25cm、太さ1~2cmの、口から入れた食物を胃に送るための管状の消化管です。胃酸の逆流がおこり、炎症を起こして(ただれて)しまうのが、逆流性食道炎です。胃食道逆流症(GERD(ガード)Gastro Esophageal Reflux Disease とも呼びます。

胃酸の役割

 食べ物や飲み物といっしょに混ざって体内へ侵入する微生物を殺菌する必要があります。衛生的な食事ができるのは人間ぐらいなもので、野生の動物はそれほどキレイな食物を食べているわけではありません。
 胃酸の主成分は塩酸で、それもかなり強いです。pH1~2程度(PH7が中世で1下がるごとに10倍づつ酸度が強くなります)。身を守る生体防御システムとしての役割は強力で、コレラ菌などは胃酸によってほとんどが死滅してしまうため、よほど大量の菌が潜入しないかぎりコレラにはなりません。皮膚につけばかぶれてしまうほどの強さです。

胃はなぜ平気なの? 食道はナゼ胃酸に弱いの?

 胃には自分で分泌した胃酸を防御する働きがあります。胃酸を分泌するときに、胃はまず粘液を先に、そしてその後に胃酸を分泌します。このため胃壁は、粘液で守られ直接胃酸にふれません。
 食道にはこの防御機能がありません。その代わりに下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)(噴門部)(英語ではLES(Lower Esophagus Sphincter)が絞(し)まることで、胃液が逆流してくるのを防いでくれているのです。

逆流性食道炎はなぜ起こる

 下部食道括約筋(噴門部)のしまりが悪くなり、胃酸が逆流して、食道に胃酸が流れてくることで炎症を起こして、ただれたり潰瘍をおこしてしまいます。また、胃酸によって活性化されたタンパク質分解酵素(ペプシン)がさらに食道を傷つけます。

がん化することも

 逆流性食道炎がおこって回復する過程で、食道に胃粘膜と同じような上皮が現れてくる場合があります。これを「バレット粘膜」と呼びます。これ自体は悪性のものではありませんが、食道がんに悪性化する場合があります。食道がんの原因の半数以上がこのバレット粘膜だとされています。

逆流性食道炎の原因は

年齢による胃や食道の筋力の衰え

加齢によって下部食道括約筋の働きが弱っているとともに、食道自体の蠕動(ぜんどう)運動も減り、逆流した胃液を胃に戻せなくなるからです。唾液の減少も大きな要因です。

脂肪分の多い(脂っこい)食事

 脂肪分の多い食事は消化に負担がかかり、コレシストキニンという脂肪の消化に関わるホルモン物質が大量に分泌されます。このホルモンは下部食道括約筋をゆるめる作用があります。
また、ステーキなどのたんぱく質の多い食事も消化に時間がかかり、胃に長く滞留して胃酸分泌が続き、その結果逆流しやすくなります。このほか
• 酸味の強い食品
• 唐辛子や胡椒などの香辛料
• チョコレートケーキなどの甘いもの
• 酸味の強い柑橘類
などの大量摂取も原因になります。食べてはいけないわけではありませんが、ほどほどにです。
消化の悪い食べ物をさけて、腹八分目に食べるということが大切です。

姿勢が悪いと胃が圧迫されて逆流しやすい

姿勢の悪いのも原因です。背中が曲がっているとお腹が圧迫され、胃にかかる力が強まるために、胃液の逆流が起こりやすくなります。

肥満

 肥満でおなかが出ていると、腹圧が高まり胃を圧迫し、逆流しやすくなります。

アルコール

 飲酒は、下部食道括約筋が弛緩しやすくなり、胃酸の分泌量が増えてしまいます。

歯周病との関係は

 歯みがきが歯周病の予防に必要なのは当然ですが、意外な全身の病気が歯周病を悪化させてしまいます。逆流性食道炎も、歯周病の像悪因子のひとつです。

食道も唾液によって守られています

唾液はととも働き者

 唾液には、パンのような水分の少ない食べ物を湿らせ咬みやすく飲み込みやすくするなどの役割もありますが、口腔粘膜を保護する作用も大切です。
 粘膜は乾燥に弱く、常に湿らせておく必要があります。また唾液の成分の一つムチンはねばねばした糖タンパク質ですが、すべりをよくして頬や舌を噛んだり・口内炎になるのを防いでくれたりしています。

唾液は食道も保護しています

 食道に胃酸が逆流してくると、食道から脳へSOSが発せられます。救助を求められた脳は、唾液腺に対し分泌を増やすように支持します。唾液を食道に送り込む事によって、食道についた胃酸を洗い流し、唾液の粘液が食道を保護します。
 レモンをかじると大量の唾液が分泌され、酸を薄め、また酸を中和する力(緩衝能といいます)により、口腔粘膜を保護しますが、食道に対しても同じことをしてくれるのです。

ただ、歯に負担がかかります

 つば(唾液)をためて飲み込んでみてください。口が閉じ上下の歯がぶつかります。食べ物や飲み物を飲み込むときに、気道に入らないように気道をふさぎます。口が開いていると気道の閉鎖が上手く出来ないために、飲み込むときには上下の歯がぶつかって顎を安定させる必要があるのです。
 寝ているときにも、口腔乾燥を防ぐために唾液が少しづつですが、分泌されています。正常な人でも、一時間に数回は唾液を飲み込んでいます。寝ているときは、体が横になっていますから、胃酸が食道に逆流しやすいため、逆流性食道炎の症状が出やすくなります。このため唾液の分泌・嚥下(飲み込むこと)が多くなるのです。
 上下の歯がぶつかるのは正常な人で、一日20分程度と考えられています。以外に短い時間です。逆流性食道炎の人はこの上下の歯のぶつかりが多くなり、歯やそれを支えている歯槽骨、そしてその間にある歯根膜組織が疲弊してしまい、歯周組織の血行不良や活性酸素の増大がおこります。これが何十年もつづくと歯周組織の破壊、つまり歯周病が悪化します。

肺炎をふせぐのも、歯周組織に過度の負担になります

 一時日本人の死因の第3位だった肺炎は、幸いなことに第5位まで順位を落としています。肺炎球菌ワクチンの摂取や、誤嚥性肺炎の危険性が周知され予防されるようになってきたおかげです。誤嚥性肺炎は、食べものや口腔内細菌が肺に落ち込んで起こると考えられています。ただ胃酸の逆流によるものも多いのではないかと最近の研究でだんだん明らかになってきています。

逆流性食道炎からおこる肺炎

 胃酸は、手に付くとかぶれるぐらい強力な酸です。肺や気管支は食道以上に酸に弱く、胃液が肺胞に到達すると、胃酸に触れた肺胞内面が化学的熱傷を起こし重度の肺炎になります。
のどや口腔機能の低下した高齢者に多いのですが、(最近、口腔機能低下症の患者さんの低年齢化がすすんでいますので若くても注意が必要ですが)口腔機能が保たれていれば、口の奥やのどの筋肉ががんばって、胃酸が気道に入るのを防いでくれます。

だから食いしばる

 まさに「くいしばってがんばれ」です。歯を食いしばることにより、食道を逆流してきた胃酸が気道に入るのを防いでいます。このおかげで胃酸逆流による誤嚥性肺炎にならずにすんでいるのです。ただ、食いしばっている歯は、疲労困憊 (ヒロウコンパイ ひどく疲れて苦しむ)のです。
 また、食いしばったり・歯ぎしりすることにより、唾液腺とくに耳の下前方にある耳下腺を刺激し唾液の分泌が促進されるので、無意識的に歯ぎしりをしてしまうのです。
つまり、逆流性食道炎による胸やけやのどの痛みを遠ざけるために、食道を保護するために、歯周組織が犠牲になっているのです。

逆流性食道炎がなくても安心しないでください

 逆流性食道炎の病名がついていなくても、健康な人でも全く逆流が起こらないわけではありません。唾液や口腔やのどの筋肉、歯そして歯周組織ががんばっているから、逆流性食道炎にならずにすんでいるという可能性もあります。
 歯に無理な力をかけていないかどうか、一度、近くの歯医者さんで調べてもらってください。

逆流性食道炎を防ぐ日ごろの注意

下部食道括約筋の働きを弱める食べ物や胃酸を増やしてしまう食事、さらには胃に負担がかかる姿勢など、日常生活も気をつけたいものです。

下部食道括約筋や胃に負担をかける食べものに注意

• 酸化した油(古い油)で作った食材
• カフェインを含むコーヒーや緑茶を濃くしない、大量摂取も控えましょう
• アルコールは、薄いものを少量だけ(ウイスキーのストレートは厳禁)
• 酸味の強い食品
• 唐辛子や胡椒などの香辛料は隠し味程度に、(劇辛カレーはダメ)
  辛(からい)と辛(つらい)は同じ字です。
• チョコレートケーキなどの甘いものもほどほどに
• 酸味の強い柑橘類

値段の安い食べもの

 うーん、誤解を招く表現ですが。アレルギーが何かありますかと、学校の調理実習で聞かれて
「高いえびは平気だけど、安いえびはアレルギーでます」と記入して、隣の席の子から「新鮮なえびは平気だけど、古いえびはアレルギーでます」と書いたほうがいいよ。といわれた子どもがいます。隣の席の子は常識人でエライなー。
 日大歯科病院(駿河台)の近くに美味しいてんぷら屋さんがあります(山の上ホテル)。ここの天麩羅食べて胃がもたれたことはありません。でも値段が高くて年1回いけるかどうか。安いてんぷら食べるとすぐもたれます。油について話し出すときりがないので、べつの機会に。そもそも油の酸化とは、光や熱、酸素などによって油が劣化することです。
 チョコレートも値段がしっかりしたものは原料もしっかりしています。カカオマス、砂糖、ココアバター、ミルクなど。でもコスト削減のために植物性の油脂、乳化剤、風味をごまかすため香料や甘味料など添加物が配合されることも多い。
 アイスクリームも同じです。本来、生乳をベースに生クリームを混合させたりしますが、ラクトアイスになると、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、グリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ヤシ硬化油やパーム油、綿実油など、ウーン安いだけのことはあります。
 オリーブオイルは消化に負担がかかりません。日頃の調理に使う油をオリーブオイルに変えるだけで逆流性食道炎の予防になります。

胃に圧力がかかる生活習慣を減らす

• 前屈みの姿勢を避ける。スマホやなるべくやらない
• お腹をベルトなどで締めすぎない
• 重いものを無理して持たない
• 肥満に注意する

寝るときも

• 食後すぐに横にならない (食べてすぐ寝ると牛になります)
• 食べてすぐの就寝は、胃の中のものが逆流しやすいので避ける
• ひどいときは上半身を少し高めにして眠る

ストレス

 食道の知覚が過敏になります。大きな原因の一つです

喫煙

 なんでいまだにタバコを販売しているのか、理解に苦しみます。販売禁止すればいいのに。
 肺がんリスク30倍です。それだけでも十分禁煙の理由になります。
 喫煙はすべての臓器を荒らします。実年齢より各臓器が老けます。胃腸によくないのも明白です。歯周病の原因でもあります。(タバコのニコチンは血管を収縮させる毒性があり、粘膜からの吸収がよいことから、口腔・食道・胃の組織の血行を阻害します)すぐに禁煙にとりくむべきです。

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