狭心症・心筋梗塞と歯の関係 血管が詰まってしまう病気を、血栓症といいます。心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を送っている血管を冠動脈といいますが、この血管が詰まってしまい、心筋が壊死して心臓が動かなくなってしまうのが、心筋梗塞です。
血栓には、その原因によって、白色血栓と赤色血栓があります。
白色血栓
脂肪の多い血液だと、脂肪の塊が血管壁に付着しやすくなります(ラーメンのスープの油が器にこびりつくのと同じです)。このコレステロールの塊をアテロームといいますが、これがたくさんできている状態が動脈硬化です。この状態が長く続くと、血管が壊れた時に栓をする役割の血小板が、コレステロールの塊に付着していきます。これが成長して血管をふさぐほど大きくなったのが、白色血栓です。
赤色血栓
不整脈や心房細動などで、血液の流れがよどんだり乱れたりすると、血液の凝固因子が活性化してしまいます。
これによりフィブリノーゲンという血液の中の繊維の元が凝集して、フィブリンという血液繊維が網目状の糸くずのような状態になり、赤血球がからまり塊となります。これが赤色血栓です。
歯周病が血栓の原因になるのはナゼでしょうか
血液凝固因子が働きやすくなるからです
血管にキズができると、左の図のように、血小板を凝集させてふさぎ、フィブリンで固めて、新たな血管壁を形成するまで一時的に壁をつくります。血管の再生が完了すると、凝固した血液はプラスミンと言う成分で溶かされて元の正常な血管にもどります。しかしこれをくりかえしていると血液凝固因子の活性が上昇してしまいます。
「歯ぐきから出血しませんか?」 歯周病の代表的な症状の一つです。歯ぐきに繰り返しキズができているということです。小さなケガが慢性的に出来ているのですから、身体はなるべくキズを直そうという力が強くなり、凝固能力を増強します。つまり血液が固まりやすくなるということです。
ストレスも、血液凝固能力の増強に大きくかかわっています。
白血球の粘性がたかまります。
白血球は、身体の中に入ってきたバイキンを殺してくれる頼もしい免疫の雄ですが、身体のどこかに炎症が起こると、数も増え、活動も活性化します。細菌を探して捕まえやすくするために、白血球の表面の粘着性が高まります。当然 血管壁への付着性も増加するので、血栓ができやすくなるのです。
歯周病は、細菌性の慢性炎症ですから、白血球の表面粘性は高まります。ちなみに、喫煙習慣やストレスも白血球の表面粘性が上がります。
歯周病菌が直接、血栓をつくります
口腔内の細菌は700種類以上います。健康な歯ぐきにも見られる身体と調和して暮らしている菌も存在します。でも歯周病が進んで歯周ポケットが深くなっていくと、質の悪い菌が出現してきます。これらを専門的にレッドコンプレックスと呼んでいます。
レッドコンプレックスの特徴
- 重度の歯周炎に最も影響(毒素の質が悪く量も多い)
- 組織の破壊能力が強く、身体の深部へ侵入しやすい
- 白血球に対して抵抗性が強く、血管内で生存増殖可能
プラーク
歯の表面で細菌が、集団生活をするためにコロニーを作りますがこれをプラークと呼んでいます。プラーク1gには10億匹のバイ菌が成育しています。ばらばらにならないように粘液をだして、歯の表面に強く固着しているのですが、血管内にはいりこんだ、歯周病菌もおなじように、血管内壁にプラークをつくります。これに赤血球などが絡まり。血栓へと成長してしまうのです。
手術などで取り除かれた血栓を調べると、歯周病菌が検出されることが多いのです。
いとも簡単に血管にはいりこめます
古い医学的な考え方では血管の中に細菌は入り込めない、万が一入り込んでも、素早く白血球により殺され処理されると考えられてきました。ところが、不潔な歯周ポケットには、微細な潰瘍がたくさん形成されていて、いとも簡単に細菌が侵入できると現在の医学では考えらています。