ADL(日常生活動作) Activities of Daily Livingの略称です。
介護などでよく使われる言葉です。
食事やトイレ、移動や歯みがきなどの身だしなみ、入浴などと言った、日常生活を送る上で最低限必要な基本的行動を指します。
若く健康な人であれば、普段の生活の中で、当たり前の様に習慣にしている行為や行動です。
介護の必要性
ADL(日常生活動作)がしっかり行えていれば、介護の必要性はありません。しかし、日常、何の問題も無く普通に行って来ている行動や行為でも、高齢になるにつれ行う事が難しくなってくることがあります。一つ一つを観察していると、ご自身でできることと、手助けが必要な事がでてきます。手助け(介助)も、ちょっとの助言ですむ・少し手伝うから、全部介助しないといけないまでさまざまです。
本当はちょっと手伝ってあげればよいことを、全部やってあげてしまうと、できないことがどんどん増えてしまいます。
介護の基本は、できないことだけ手伝ってあげることですが、十分時間が取れないなど、現実にはなかなか難しい問題です。
ADLを評価する方法も必要です。
FIM(機能自立度評価表)
Functional Independence Measure の頭文字です。日本語に訳せば、機能的自立度評価表 です。
FIMは「している」を評価するものです。入学筆記試験のように「できる・できない」を判別するものではありません。日常生活における実際の動作を観察し、評価していく方法です。
採点は 1 点から 7 点までの 7 段階評価で行います。
7点 | 完全自立 | 動作に問題がない |
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6点 | 修正自立 | 時間がかかる、補助具が必要、安全の配慮 |
5点 | 監視・準備 | 監視、指示、促し(認知項目の場合、90%以上自分で行う) |
4点 | 最小介助 | 75%以上自分で行う(認知項目の場合、75%以上90%未満) |
3点 | 中等度介助 | 50%以上、75%未満自分で行う |
2点 | 最大介助 | 25%以上、50%未満自分で行う |
1点 | 全介助 | 25%未満までしか自分で行えない |
ただ、認知項目は 5 点と 4 点の採点基準が多少異なります。
FIMの評価項目は、運動項目4つ・認知項目2つです。
運動項目は、セルフケア・排泄コントロール・移乗・移動の4つ。
認知項目は、コミュニケーション、社会認知の2つです。
セルフケアの評価
セルフケアとは、簡単に言えば、自己管理です。
食事
食事を、口に運ぶことから始まります。食べ物を口の中に取り込み,咀嚼(唾液とまぜ噛み砕き飲み込みやすくすること),そして食塊(食べ物をある程度の塊西飲み込んやすくする)をつくり、舌と上顎(口蓋)のあいだをつぶすようにして、ノドに送り込み、嚥下(飲み込むこと)をするまでの動作です。歯医者はこれを摂食嚥下(せっしょくえんげ)と言います。咀嚼・嚥下までを採点します。
7点 | 普通の食事を自分一人で口に運び、咀嚼・嚥下出来る | ||||||||||||
6点 | 自助具・嚥下食が必要だったり、胃瘻(いろう)を自分で管理している | ||||||||||||
5点 | 食事にとろみをつけるなど、準備や見守りが必要 | ||||||||||||
4点 | 口の中に食べ物が溜まっていないか、介助者が指で確認する必要がある | ||||||||||||
3点 | 介助者が自助具をつけたり、スプーンに食べ物を乗せる必要がある | ||||||||||||
2点 | 口に運ぶまでの動作すべてに介助が必要だが、多少本人が協力できる | ||||||||||||
1点 | 咀嚼・嚥下は出来るが口に運べない、胃瘻(いろう)を介助者が管理 | ||||||||||||
7点 | 5項目を準備含めてすべて一人で出来る |
6点 | 電動歯ブラシを使用する |
5点 | 化粧品のふたを開けるなど、用具準備に介助が必要 |
4点 | 後ろ髪だけ梳く、石鹸をつけるなど、5項目すべてに最小介助がいる |
3点 | 顔の洗い残しがある、非麻痺側の奥歯が自分で磨けない |
2点 | 前歯だけしか磨けないなど、5項目すべてに半分以上の介助が必要 |
1点 | すべての整容を介助者に任せている |
私見です。すいません
特に歯医者に関係する項目はこの二つです。正直、ちょっと雑に作られているなーという気がします。このホームページを作るのに当たって特に気をつけている事は、他の歯医者さんなどのホームページの批判をしないことです。ただこの項目だけは少し誤解しやすいのではないかと思います。
確かに、食べるという行為は、
① 食べ物を食べものと認識出来る。
② その食べ物を適量、取り口の中に運ぶ。
③ 咀嚼(唾液とまぜ噛み潰す)
④ 食塊形成(飲み込みやすいように適量の塊(お団子)にする。)
⑤ 食塊を喉に運び込み、気道を封鎖し、食道に送り込み、飲み込んだら、食道を封鎖し、起動を開放する つまり嚥下です。
という連続したスムーズな行為で成り立っています。
我々歯医者は、このどの部分が上手にできないのか。注意深く調べていきます。これら1~5の評価をここに行うべきであり、 FIM の評価はこれらをゴッチャにしてしまっています。
手や腕に麻痺などがあり、食べ物を口に運ぶことはできないけれども、噛み砕き飲み込むことは出来る人もいれば、
認知症などにより、いつまでも噛み続けていて、脳が飲み込むこと指令できない人もいます。食事の4点の評価のところに指で確認するとありますが、歯医者などの専門家でない限り、人の口の中に指を突っ込むのは噛まれたりする危険もあり、かなり難しい作業です。
それ以外の評価
清拭 入浴時の身体を洗う・拭く動作を評価
更衣 服の着脱を評価
トイレ動作 衣服の着脱やお尻を拭く動作で評価
排泄コントロール 排尿管理・排便管理
移乗 ベッド・椅子・車いす間 便器への移乗 浴室への出入
移動 歩行・車いす 階段
認知項目(コミュニケーション)と(社会認知)
視覚・聴覚からの情報を、どういった方法でどの程度理解するかを評価
はっきりとした音声・書字・手話で、自分の思いをどの程度相手に伝えられるかを評価
社会的交流
日常生活での金銭的・社会的・個人的な問題について、合理的な対応が出来るかを評価
記憶
などを調べます。
IADL(手段的日常生活動作)
ADL(日常生活動作)よりも複雑で高次な行動や行為です。
物事を考えながら行う事、たとえば、買い物や洗濯、掃除と言った家事全般や、金銭や服薬の管理、移動手段に乗り物を使用するなどと言った、高齢者にとって困難かつ複雑な行為や行動になってきます。
IADL(手段的日常生活動作)が行えているかと言うのは、高齢者が自立した生活を送れるかどうかの判断基準になります。
ただ、やろうと思えばできるのに、おっくうがってやらないといった場合も多く評価が難しいです。
ADL(日常生活動作)とIADL(手段的日常生活動作)両方が良い状態であれば、生活の質(QOL)が高いと言えますが、
毎日の生活を、楽しく、満足しているかが大切であり、評価することが目的にならないように細心の注意が必要です。
車椅子で歩行困難な方でも、旅行にいかれたり、イキイキとしている方もたくさんいらっしゃいます。
歯の治療で往診にお伺いした患者さんに、とてもすてきな手品を披露してもらったこともあります。
ADL(日常生活動作)ができていたとしても、日常生活に問題があれば生活の質(QOL)が低いといわざるをえません。
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