ノンメタルクラスプデンチャー
正式には、ノン(無)、メタル(金属)、クラスプ(入れ歯の支えにする歯に掛けるバネ)、デンチャー(義歯・入れ歯)といいます。
ノンクラスプデンチャーと呼ばれることが多いです。
実物を見ていただくのが、一番わかりやすいと思います。
おわかりいただけたように、入れ歯を安定させる、残っている歯にかけるバネ(クラスプ)を金属ではなく、歯ぐきと同じピンクの材料で作る義歯です。
もう少し詳しくご説明します
歯の本数は28本です
本来、歯の本数は、親知らず(第三大臼歯)を除くと14×2(上下2顎)本です。でも歯周病やむし歯などで歯を失ってしまう方が多くいらっしゃいます。現在の歯科医学では、失った歯を再生することはできません。
欠損(歯が失われた)部分を、人工的に修復する方法、これを専門的には補綴(ほてつ)といいますが、義歯のほかにもインプラント、ブリッジ(架橋義歯)があります。
インプラントは、高額な費用(某大学でも一本45万円します)・顎の骨を削って人工物を埋め込むため外科処置が必要・安定せずバイ菌感染のリスクがある。
一方、ブリッジは保険適用の物もありますが、少数歯欠損のみの適用であり、支える歯を支台歯といいますが、これに高負担の荷重がかかる・支台歯を大きく削らなければいけないなど多くの欠点があります。
インプラントとブリッジ(架橋義歯)
義歯(入れ歯)も欠点だらけですが
入れ歯(義歯)も入れ心地が悪い、年寄りくさい、しゃべりにくい、食べ物の味が感じにくいなどとても多くの欠点を有します。でも歯を削ったり、顎を外科手術するなどの、御自身の体を傷にしないという良い特徴もあります。このため義歯が選択されることも多いのですが、せっかく作った義歯が5年後には60%しか、使われていないという統計もあり、利点もありますが、義歯にも多くの欠点があります。大きな欠点の一つが、見た目(審美性)です。
奥の歯にバネ(クラスプ)を架ける分には、口の外からみえないのですが、前歯にバネをかけると、やはり見た目の問題がでてきます。口唇などに隠れて見えないようにするのですが、やはり金属のバネ(クラスプ)では、審美的に限界があります。
入れ歯をいれていると気づかれにくい
見た目だけでも、なんとかならないかと開発されてきたのが、ノンメタルクラスプデンチャーです。
バネをピンクにする
金属のバネ(クラスプ)を、ピンクの歯ぐきと同じ色の材料で作っているのが、上の写真からお解かりいただけると思います。
バネがめだちません
上の義歯なので天地逆にしましたが、バネがめだたないので入れ歯を入れていると気がつかれにくいです。
欠点も数多くあります。
残念ながら、発展途上の治療方法であり、数多くの欠点もあります。
保険適用がない
浅草の田中歯科医院では、保険治療を基本に考えています。日本は国民が全員保険で良質な治療を受けられる、数少ない素敵な国です。当歯科医院では、保険治療を基本に考えています。保険導入されていないのは残念でしかたありません。次の項目で考えていきますが、症例ごとに難易度が違い、費用も画一的に定価いくらですとお話しにくいのですが、数万円からそれ以上になることが多いようです。
材料の種類が多い
日本で認可されているノンメタルクラスプデンチャー用の熱可塑性樹脂の種類です。かなり多くの製品があります。一般の義歯の材料はメチルメタクリレートがほとんどなのに対してとても多くの種類があります。
ということは、これが一番というものが無く、それぞれの製品に一長一短があるということにほかなりません。
かなり専門的な話になりますが、なるべくわかりやすくお話しすると、
ポリアミド系
破折しにくいという利点がありますが、曲げた時の強度は、製品により色々です。歯科医院で良く使われる常温重合レジン(メチルメタアクリレート)と接着しないため、即日の修理や大掛かりな調整が困難という欠点があります。
ポリエステル系
比較的新しい材料です。エステショットは、曲げ強さに良好ですが、耐衝撃性が弱く、使用中に破折するリスクが高いです。この欠点を改善したのが、エステショットブライトです。柔らかく、耐衝撃性がエステショットの8倍に向上しています。常温重合レジン(歯科診療室で日常使う義歯修理用の樹脂です)との接着が良好であることが大きな利点です。つまり壊れたりした時に、歯科医院の診療室(チェアサイドといいます)での、修理が可能ということです。適合精度も他の樹脂と比較して良好です。
当院(浅草の田中歯科医院)では、この材料をお勧めすることが多いです。(患者さんの口腔内の状態によりケースバイケースですが)
ポリカーボネート系
この材料が、一番身近で見たことがあるのではないかと思います。DVDディスクがこの材料で作られています。曲げ強さも強く耐衝撃性も良好です。ただ適合性にやや劣る欠点があります。(それでもバルブラストより良好であるとの報告もあります。)常温重合レジンとの接着も可能です。
ただこの材料からは、内分泌撹乱物質が溶け出す報告があります。ポリカーボネートは、プラスチックの一種で、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と言われているビスフェノールAをもともと原料としているためです。ビスフェノールAは女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをします。肥満、甲状腺の異常、ガン、喘息、前立腺の異常(精子が減る)などが、動物実験の結果から、警告されています。妊娠の可能性のある女性には使用しないほうが良いかもしれませんが、ウーン現代社会では、化学物質が生活の周りにいっぱいですから、特にこの材料だけが悪いというものでもない気がします。
アクリル系
保険適用の熱可塑性樹脂をやわらかくしたものですが、詳細な情報が無いのが現状です。
ポリプロピレン系
新しく義歯床用熱可塑性レジンとして認可されたものですが、詳細な情報はやはり無いです。
結局、これぞというナンバーワンはありません
患者さんの、口腔内の状態と相談しながら決める以外に手はありません。
浅草の歯科医院の歯医者さんはとても勉強熱心で、ノンメタルクラスプデンチャーに関しても造詣が深いので信頼して任せて大丈夫ですが、御心配なことがあれば、よく相談なさって決めて下さい。
一部金属を使った方が安定が良い場合が多いです
全く金属を使わない義歯も可能は可能ですが、歯ぐきに食い込みやすく、見えない部分に金属を使った方が安定が良い場合が多いです。担当の歯医者さんとよく相談して設計を考える必要があります。